2019/05/17 ページ11
ああもう、この人は完全に他人なんだ。
そう思った瞬間だった。
気まずそうに目を逸らして席に戻った裕太の背中は、もうあの頃の裕太とは全然違う背中だった。
裕太が復職して、一週間が経った。
初日のあの日以来、私達は一切口も聞かず、関わりもなく。
課長が言っていたとおり、裕太はまるで別人のように性格が変わっていた。
誰とでもよく話すし、いつもにこやかで愛想もいい。
一週間で裕太のそのキャラクターはすっかり認められ、他の社員にも可愛がられてるようになった。
だけど彼は、私にだけは微笑みかけてこない。
むしろ、避けられてる感満載で。
だから私も自然と避けてしまうし、なるべく裕太を視界に入れようとはしなかった。
だけど…、今日は憂鬱な新人歓迎会。
「Aさんって、玉ちゃんとあんまり仲良くない感じですか?」
休憩中、給湯室でコーヒーを淹れていたら、後から来た志穂ちゃんにこっそりそんなことを囁かれた。
「何で?」
「だって、全然話さないじゃないですか
玉ちゃんもAさんには近寄らないし」
玉ちゃんって呼んでんだ?
あれから志穂ちゃんとはランチに行ってないけど、たまにこうして休憩が重なるとすぐ、裕太の話を持ち出してくる。
…これって、けっこうストレスなんだけど。
「Aさんのことが怖いのかって、玉ちゃんに聞いてみたんですよ
そうしたら、何も答えてくれなくて
もしかして2人、過去になんかあった感じですか?」
彼女は何も悪くない。
だって何も知らないんだから。
でも、それを知ってても私は、こんな無邪気な彼女のことがストレスで仕方なかった。
指導係なんかじゃなきゃ、口を聞かなくて済むのに。
「なんの話?
ガールズトーク?」
いいタイミングで給湯室に入ってきた宮田くんは、マイルドな笑顔で私達に話しかけてくる。
「玉ちゃんとAさんって、仲悪いんですか?」
ストレートな志穂ちゃんの質問に、宮田くんは一瞬真顔に戻ったけど、
「じゃあ志穂ちゃんは、同期の子とはみんな仲良しなの?」
笑顔でそう聞き返していた。
「大体、仲良しですけどね
でもやっぱり、何人かは合わないなって思う人がいます」
「玉もAちゃんも、そんな感じだと思う
2人とも、タイプが違うし」
そんな宮田くんの返しに、
「それより、昔の玉ちゃんの話を聞かせてくださいよ」
志穂ちゃんがそう詰め寄ってるのを横目に、私はこっそりと給湯室を抜け出した。
1825人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時