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別に鍵をかけられたわけでもないし、いつでも逃げようと思ったら逃げ出せるんだけど。

私はこの部屋が何故か、気に入ってしまった。

薄暗くて、四畳半くらいの狭い部屋の真ん中には小さなこたつ。

電源を入れるとほんのり暖かくなって、恐る恐る入ってみたら、どんどん眠くなっていく、まるで魔法の箱。

先生が迎えに来てくれるまでに少しは勉強しておこうと、机の上に勉強道具を乗せてみようとするけど。

この居心地のよさに、ついウトウトしてしまう。

そのウトウトはそのうちにどんどん気持ちよくなり、そのまま横になって熟睡モードに入ってしまった。

こたつは危険だ…!

家にこたつなんか置いたら、絶対勉強なんかはかどらないかも。









「…A、起きろって。」

そう言って揺り起こされた時には、もうすっかり日は陰ってしまっていたらしく、

部屋の中は既に真っ暗で、先生の声だけがこの部屋に響いている。

「…今、何時?」

力なく声を出せば、

「夕方5時。」

呆れたような声がして、部屋の蛍光灯が瞬きをするように点滅した後、パッと部屋が明るくなった。

「いい度胸してんじゃん。
誘拐されてんのに、のん気に昼寝とか。」

まだ寝起きの私は、伸びをしながらようやく起き上がる。

「だって気持ちいいんだよ、こたつ。
裕太も入ってみてよ。」

先生は渋々こたつに入ってきたけど、

「…やば。
ガチで寝ちゃいそうなんだけど。」

そう言って、ふにゃりと笑う姿が、とても27歳には見えないほど可愛く見えてしまった。









だから机越しに手を伸ばして、先生の頭を撫でてみる。

先生は頭を撫でられてんのに抵抗もしないで、そのまま深く頭を下げた。

「ごめん…。
俺のせいで迷惑かけて。」

なんて、本当に申し訳なさそうな声で。

それがますます、私の母性本能をくすぐるんだって。

「優さんにはもう会った?」

まだ先生の頭を撫でながら、できるだけ優しくそう聞いてみた。

「チラッとだけね。
ロビーで、ミツにガチめの説教受けてた。
俺はそのまま、この部屋に来たから。
そしたらAは熟睡してるし。」

頭を撫でてた手を引っ込めれば、先生はようやく頭を上げてくれた。

「お迎えに来てくれてありがとう。」

きちんと先生にお礼を言えば、

「当たり前だろ。」

先生は珍しく、はにかんだように少しだけ微笑んで、そのまま目を伏せてしまった。

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わかめ(プロフ) - コメントありがとうございました!返信が二か月も遅くなりまして、大変申し訳ないですー(*'ω'*)これからはコンスタントにそこそこ更新できそうです。どうぞよろしくお願いします(*'ω'*) (2018年3月8日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - わかめさん» ずっと更新待ってました!!!今から読みます!!! (2018年1月7日 8時) (レス) id: 1599802159 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ゆきさん» いつもいつも、更新遅めで申し訳ないです(/ω\)引き続き読んでいただけたらうれしいです(*'ω'*) (2018年1月7日 1時) (レス) id: 8af18b42f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - わああああ〜〜〜ありがとうございます (2018年1月2日 22時) (レス) id: 1599802159 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ゆきさん» お待たせいたしました。先程更新いたしました。ご期待に副えるかどうか心配ですがwwwこれからもどうぞよろしくお願いしますm(__)m (2018年1月2日 1時) (レス) id: 8af18b42f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2017年12月29日 22時

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