九 ページ10
朝餉を十分すぎるほどに頂いてから、
今度こそ片付けは拙者一人で行った。
とはいえ食器の元あった場所までは分からぬ故、
Aは結局拙者の片付けをそばで見守っていたが。
「嵐、なかなか去りませんね」
片付けを終えて少し腹を休めていたら、
Aが窓の外を眺めながらそう言った。
しかしそこには一切の嫌気はなく、
むしろ楽しげですらあった。
「ねえ、楓原さん。良ければ今晩も泊まっていかれませんか」
「それは……」
是非お願いしたい、というのが正直なところ。
しかし仮にも年下の彼女に、
至れり尽くせりしてもらいながら
二泊もするというのはさすがに良心が痛む。
「遠慮しないでください。これは私にとって、奉公に行く前の最後の思い出作りのようなもの。だからむしろ、こちらからお願いします」
まだ旅の話も聞き足りないし、と
Aが少しだけ寂しげに笑うので、
拙者は断るに断れなくなってしまい。
最終的に、嵐が去るまでの間は
ここに居座らせてもらうことになった。
「しかしこうもしてもらってばかりでは、申し訳ないでござるよ。何か拙者もAに恩返しがしたい。拙者に手伝えることならなんでも申し付けてほしい」
「手伝えること……うーん……」
名前が指を顎下に当てながら考えていると、
ポツリ、その鼻先に雫が落ちた。
「つめたっ」
その冷たさに驚いたAが顔を上げる。
拙者も釣られ、その視線の先を追うと
どうやら天井の隙間から雨漏りしているようだった。
その瞬間、Aは「これだ!」と
言わんばかりに瞳を輝かせ、
拙者の方を見た。
拙者も何を頼まれるのかを察し、笑顔で頷いた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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思雲@誤字る塩(プロフ) - …????????え、夢主ちゃん…????こんな切ない、悲哀系だとは分かっていたけど、ここまでだとは…万葉の言動心理表現が上手すぎですね…!?とても儚い素敵な作品でした…この作品を制作してくださって本当にありがとうございました。これからも創作活動頑張ってください。 (2023年2月3日 0時) (レス) @page33 id: 658471da89 (このIDを非表示/違反報告)
?? ?りく? ??(プロフ) - あれ…目から水元素が…。最高でした。 (2022年12月4日 20時) (レス) @page33 id: 52489b2aa2 (このIDを非表示/違反報告)
ri_syen(プロフ) - もう涙がとまらなくて…( ; ; )最高の小説です (2022年10月5日 21時) (レス) @page33 id: 4f69967d38 (このIDを非表示/違反報告)
こーひー(プロフ) - 涙が...すごい好みドストライクな作品でした。うう...涙が止まりませんでした...切ない... (2022年8月17日 22時) (レス) @page33 id: da21190636 (このIDを非表示/違反報告)
Re:(プロフ) - 午後の紅茶さん» コメントありがとうございます。お名前からして水分が抜けちゃうとえらいことになりそうですね…笑 しっかり水分補給してくださいませ🍵 ありがとうございます、頑張ります! (2022年8月8日 2時) (レス) id: 7f1d8b0622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Re: | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2022年7月19日 16時