二十一 ページ22
もはや馴れた手付きで片付けを済ませ、
Aから風呂敷に包んだお弁当を受け取って
あとは出発するだけとなった。
Aはわざわざ外に出て見送りに来てくれた。
笑顔を保ってはいるものの、
お互いどこか寂しく感じているのが見て取れる。
とはいえ、桜が咲く頃になれば、
拙者はもう一度ここを訪れるつもりだ。
これが今生の別れというわけではない。
「──結局、二日間も世話になってしまったでござるな。お主が提供してくれたものはどれも逸品であった。本当に有難う、A。この恩は決して忘れぬでござる」
「いいえ、私こそ……とても楽しい一時をありがとうございました。……今まで何度か、こうして浪人様をお見送りしたのですが……なんだか今日は、いつもより名残惜しく感じてしまいます」
Aの目元は少し赤らんでいた。
拙者も、同じような気持ちだった。
人との別れをこれほど惜しく感じたのは、
いつぶりであろうか。
いつの間にか、拙者の中で
Aの存在はそれなりに
大きいものとなっていたらしい。
「……はは、この調子では、桜が咲くよりも前にまたここに立ち寄ってしまいそうでござる」
「! ……是非、是非お越しください。私はここに居る限り、いつだってお待ちしております」
「うむ。──今度は何か、手土産を持ってくるとしよう」
「えっ……本当ですか? ならば、それとお弁当を交換する、なんていかがでしょう?」
何なら、土産が無くとも
毎日だって来てくれて構わないのですよ、と
彼女は息巻いて言う。
それに思わず吹き出して、
「ははっ、それではまるで──」
と言いかけたところで、止めた。
俗に言う愛妻弁当のようだ、などと
軽く言ってしまうのは些か気が引けて。
「……拙者はもう行こう。また近いうちに会えるだろうが、その間もどうか息災で」
「はい。……楓原さんも、御達者で」
お互いに微笑み、祈りを込め、
最後に一度握手をしてから、拙者は旅路へと戻った。
立春を思わせる晴天。
風はまだ少し湿っているが、
これももうすぐ花を咲かせる風となるだろう。
三種の鳥のさえずりと、
小川のせせらぎが心地良い。
ゆったり流れる雲の影を追って、
拙者は一先ず、山道を登ることにした。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
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思雲@誤字る塩(プロフ) - …????????え、夢主ちゃん…????こんな切ない、悲哀系だとは分かっていたけど、ここまでだとは…万葉の言動心理表現が上手すぎですね…!?とても儚い素敵な作品でした…この作品を制作してくださって本当にありがとうございました。これからも創作活動頑張ってください。 (2023年2月3日 0時) (レス) @page33 id: 658471da89 (このIDを非表示/違反報告)
?? ?りく? ??(プロフ) - あれ…目から水元素が…。最高でした。 (2022年12月4日 20時) (レス) @page33 id: 52489b2aa2 (このIDを非表示/違反報告)
ri_syen(プロフ) - もう涙がとまらなくて…( ; ; )最高の小説です (2022年10月5日 21時) (レス) @page33 id: 4f69967d38 (このIDを非表示/違反報告)
こーひー(プロフ) - 涙が...すごい好みドストライクな作品でした。うう...涙が止まりませんでした...切ない... (2022年8月17日 22時) (レス) @page33 id: da21190636 (このIDを非表示/違反報告)
Re:(プロフ) - 午後の紅茶さん» コメントありがとうございます。お名前からして水分が抜けちゃうとえらいことになりそうですね…笑 しっかり水分補給してくださいませ🍵 ありがとうございます、頑張ります! (2022年8月8日 2時) (レス) id: 7f1d8b0622 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Re: | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2022年7月19日 16時