十三 ページ14
何か思うところがあったのか、
御老人──藤川殿強っての希望で
拙者は藤川殿を自宅まで送り届けることとなった。
Aは見送るときも
ずっと心配そうに拙者たちを見ていた。
雷がゴロゴロと鳴いているが、
幸いにも風は眠っているようだった。
「……あの楓原家の人間が、こんなところにねぇ……」
藤川殿がしみじみと呟く。
「……Aちゃん、とっても良い子でねぇ。大事にしてやっておくれよ」
「それは誤解でござるよ。拙者はただ、Aの家で雨宿りをさせて貰っていただけでござる」
「おや、なんだ、そうなのかい? ……はぁ……」
残念そうに溜息を吐いて、
藤川殿は額を抑える素振りをした。
「あの子、最近両親を亡くして……わしらが引き取れたら良かったんだけれど、皆もう歳だし、あの子はまだ若いからねぇ……」
愚痴を零すように、ポツポツとそう話す。
雨が少しずつ強まっていくのを感じながら、
静かに耳を傾けた。
「なぁ、あんちゃん、あの子を旅に連れて行ってやってはくれぬか」
「……旅でござるか」
「ああ。あの子の夢さ」
「拙者は……今はまだ、自身を育てるのに一杯一杯でござる。それに、このような生活に彼女が耐えられるとも思えない」
それはきっと、彼女自身が一番分かっていること。
彼女が旅の話に夢中になるのを見て、
旅への憧れの強さは容易に感じ取れた。
しかしその一方で、
彼女は家業にこそ長けているが
家の外に出てしまえば、無力な存在なのだろう。
この世界で、旅に戦闘は付き物。
拙者と行動を共にしたとしても、
神の目も持たぬ拙者では
彼女を守りきる自信など持てるはずもなく。
無論、極めて安全な道を辿れば
広域を歩むことはそう難しくはないであろうが。
拙者が臨むのは、自然の道。
彼女を連れて行き、舗装路ばかり歩いては
拙者が旅に出た意味を見失ってしまうだろう。
「……そうかい。悪いね、婆の独り言さ。聞き流しておくれ」
藤川殿はその後、
家に着くまで口を開かなかった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーカラー
あずきいろ
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした!
今日の植物
ハイビスカス
275人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
思雲@誤字る塩(プロフ) - …????????え、夢主ちゃん…????こんな切ない、悲哀系だとは分かっていたけど、ここまでだとは…万葉の言動心理表現が上手すぎですね…!?とても儚い素敵な作品でした…この作品を制作してくださって本当にありがとうございました。これからも創作活動頑張ってください。 (2023年2月3日 0時) (レス) @page33 id: 658471da89 (このIDを非表示/違反報告)
?? ?りく? ??(プロフ) - あれ…目から水元素が…。最高でした。 (2022年12月4日 20時) (レス) @page33 id: 52489b2aa2 (このIDを非表示/違反報告)
ri_syen(プロフ) - もう涙がとまらなくて…( ; ; )最高の小説です (2022年10月5日 21時) (レス) @page33 id: 4f69967d38 (このIDを非表示/違反報告)
こーひー(プロフ) - 涙が...すごい好みドストライクな作品でした。うう...涙が止まりませんでした...切ない... (2022年8月17日 22時) (レス) @page33 id: da21190636 (このIDを非表示/違反報告)
Re:(プロフ) - 午後の紅茶さん» コメントありがとうございます。お名前からして水分が抜けちゃうとえらいことになりそうですね…笑 しっかり水分補給してくださいませ🍵 ありがとうございます、頑張ります! (2022年8月8日 2時) (レス) id: 7f1d8b0622 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Re: | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2022年7月19日 16時