家に、北山ってやつが住み着きました。2

16. ページ16

藤ヶ谷side





.





｢北山はメロンが好きだって｣




横｢え？！ちょっと早く言ってよ、メロン？……入ってないじゃん……｣





仕事が休みの渉は、フルーツの盛り合わせを買って、北山のお見舞いに一緒についてきた





横｢久々だな〜会うの｣





きっと、北山は渉のこと知らないから





｢こちら、横尾渉。俺の同僚なんだ｣




簡単に紹介して、いつもの席に座っていたたまにどうもって挨拶をした






『初めまして、北山って言います。なんか…わざわざありがとうございます』




横｢いえいえ、良かったらこれどうぞ食べてくだしゃい｣






来て早々に噛み噛みの渉に吹き出しそうになりながら、俺も買ってきたお花を花瓶に移す






『なんか部屋が明るくなったみたい、ありがとう藤ヶ谷さん』




｢どういたしまして｣




横｢ねぇ、みっちゃん｣




『……へ？』




横｢って、読んでいい？｣




『え、あぁ…いいよ笑』




横｢俺は横尾さんね｣




『え、なんで笑』




横｢なんでも笑｣




『変なの笑』







渉……渉ってば凄い




俺にはできない……どんどん北山と距離を縮める渉に、なんだかやけてきた






玉｢……横尾さんって、凄いね｣




｢……あぁ｣






その様子に、たまも圧倒されてるみたいで、苦笑いを浮かべている






『へぇ、横尾さんって料理うまいんだ』





どうやら渉は自分で作った料理の画像を北山に見せている







『生姜焼き！美味しそ〜！』




｢……それ｣







渉の携帯の画像の生姜焼きは、紛れもなく北山と作った時のもの





『なんか、これ切り方雑じゃない？』





北山がそれを言うなよ……って笑


これはね、北山が一生懸命に作ってくれた生姜焼きなんだよ






『でも、本当に美味しそう。ね、藤ヶ谷さんっ』




｢北山……｣




『…え？』




｢北山って……呼んでいい？｣




『……藤ヶ谷…って、呼んでいい？』




｢…ふふ、どうぞ｣




『うん、藤ヶ谷……笑』






どうしよう、泣いてしまいそう





｢ごめん、ちょっと飲み物買ってくるよ。何飲みたい？｣






飲み物を買いにいくと言って、



廊下に出て1人になった途端に、貯めていた涙が一気に零れ落ちてしまった





｢……っ｣






北山と過した日々も、交わした言葉や約束も


確かめ合った思いさえ、



本当にもう




全部、なかったものになってしまったんだね





.

17*→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す