家に、北山ってやつが住み着きました。

40* ページ40

藤ヶ谷side





.





朝、目を覚ましては



あぁ、夢じゃなかったんだって落胆した






｢……北山｣







ﾄﾝﾄﾝｯ




看護師の人がやって来て、検査をしますと呼びに来ただけだったのに



俺は一瞬、北山が来てくれたんじゃないかって……期待したんだ






｢すみません、今行きます｣





念の為と、車椅子で検査室に運ばれる






｢あれ……宮田さん？｣






検査室に向かう途中、なんだか慌ただしい様子の宮田さんとすれ違った



後で、また会ったら挨拶しに行こうかな






検査室で、変な機械の下に寝そべさせられ、頭の写真やらを撮るだけの検査は、割とすぐに終わってくれた





｢ありがとうございました｣






検査結果は後程ということで、病室に戻ろうとしたけど




なにやら看護師さんが忙しそうにしていたから、


自分で押しますと、慣れない車椅子をなんとか回して動かした





｢そう言えば、｣




宮田さん、どこにいるんだろうと思って



さっき見かけた辺りを探してみる





｢……あ、いた｣





廊下のソファに座ってる宮田さんと……どこかで、見た顔……





｢マスター！｣






喫茶店のマスターだと分かって思わず大声を出してしまったら、そら、驚いてこっち向くよな





宮｢藤ヶ谷さん……｣




｢どうも。どうかしたんですか？｣






そう聞くと、宮田さんは困ったように笑った




宮｢友達のね、様態が悪いみたいで……｣




｢……そうなんですね｣







宮田さんの後ろにいたマスターとふいに目が合って、軽くお辞儀をする






宮｢もう随分と……眠ったままで、昨日急に…急変して……｣





今は看護師さんが慌ただしく病室を入ったり出たりして、中には入れて貰えないらしい





｢そうなんですね…｣




宮｢……死んじゃったり、しないよねっ｣




玉｢宮田！｣






弱気な宮田さんをマスターが怒って、頬を叩いた





玉｢みつは死なない｣




｢……みつ？｣







聞き覚えがあった、




それは、凄く近い記憶の中


渉が呼んで、俺がヤキモチを焼いた






｢……う、そだろ｣






病室の名札の名前は、紛れもなく、北山の名前が書かれていた





｢……うそだ｣





悪い冗談だろ……？





宮｢藤ヶ谷さんっ！｣





車椅子から立ち上がり、病室のドアを思いっきり開けた先には


沢山の管を繋がれた痛々しい北山がいて、ベッドには血らしきものが滲んでいた




｢……北、山？｣






.

41.→←39.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す