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そこまで言うと、君は渋々といった様子で分かったと頷く。
そのあとに、任せちゃってごめんと謝罪をし、ありがとうと笑顔で礼を言ってくれた。
「ううん。おれのほうこそ、ありがとう。我儘聞いてくれて」
やっぱり、素敵だな。
君のその笑顔を見て、改めてそう思えた。
・
袋を両手に自室に戻り、ドアを閉める。
次に袋を床に置くと、カーテンを閉めた。
おれ以外の他の誰からも見えないように。
薄暗くなった部屋の中、一つの棚の前で袋の物をすべて出す。
使わなくなったペンや、ノート。それ以外にも小物や雑貨品、いろんなものが床に散らばった。
その中から一つ、ペンを手に取る。
「……Aちゃんが、使ってたペン…」
ほんのりと甘い香りがするのは、彼女の部屋の匂いだろうか。
ドキドキとした鼓動が、甘く脳内を震わせた。
「また一つ、増えた」
「…大事に、大事に保管しておかないと」
自分の机の隣にある棚から、一つの小物入れを取り出す。
そこには、たくさんのペンや鉛筆、定規などの文房具が入っていた。
それらは全て、彼女が使っていたものだ。
「…文房具類は、ここ」
(小説や漫画は、棚の下の段。…小物や雑貨品は、分類して棚の中に)
(彼女の使っていたノートは、勉強机の引き出しに)
(キーホルダーは、勉強机の前の壁に飾る)
(それから、)
一つ一つ、丁寧に分類して、それぞれの場所にしまっていく。
彼女専用の棚は、そろそろしまう場所がなくなってきている。
それでも、
「…はぁ…」
口からでた、恍惚的な溜息は、ゆっくりと部屋の床に落ちていく。
彼女が触れたもの、彼女が使ったもの、彼女が大事にしていたもの。
それらをどうして、そのまま捨てられることができるのだろう?
彼女にとっては“今まで使っていたもの”に過ぎないかもしれない。
でもおれにとっては、“彼女がいた証拠”なんだ。
そう、
これらは全て、彼女がこの世に存在してくれていた証拠だ。
(…こうすれば、微かにでも彼女を感じられる)
(直接触れることも、直接愛を伝えることもおこがましい行為だろうけれど)
(彼女がいたという証拠や、彼女が使っていたその欠片を愛でることだけは、許して)
Aちゃんでいっぱいになった棚を見上げ、全身に快感が走る。
その感覚を逃がすように息を吐き、ずっと握っていたペンを握りなおす。
それを口元に持っていき、ゆっくりと、
「…ふふ」
ペンに口づけをした。
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林檎麻(プロフ) - お久しぶりです...!!リクエスト受け取ってくれてありがとうございます..!!とっても満足しました!! (2017年11月7日 23時) (レス) id: 5f64ee0b75 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ミユティさん» こちらこそありがとうございました!これからも彼に振り回されてやってください(笑 (2017年11月6日 22時) (レス) id: ccdc96260d (このIDを非表示/違反報告)
ミユティ(プロフ) - 久々の小見川くん、とても良かったです!!!!!良く考えたら小見川君のリクエストはこれで二回目ですね笑リクエストに答えて下さり本当にありがとうございます! (2017年11月6日 21時) (レス) id: ffac928163 (このIDを非表示/違反報告)
ももか(プロフ) - 不雲綺さん» そうだったんですか、全然大丈夫です!これからも更新頑張ってくださいね (2017年11月3日 22時) (レス) id: fd489c71d0 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ももかさん» 申し訳ありません。この作品は今リクエストいただいてるものを書き終えたら更新を一時停止する予定でして…リクエストは受け付けておりません。説明文にリクエスト中止と表記しておらず、申し訳ありませんでした。 (2017年11月2日 18時) (レス) id: d72d593e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年8月29日 17時