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(オレの理想にならないのなら)
(オレの理想と違う色に染まるなら、オレが自分の手でお前を理想にしてしまえばいいんだ)
不思議そうにオレを見るお前に、手を伸ばした。
・
一度枷を外すと、感情は堰を切ったように溢れ出した。
それは独占欲か、支配欲か、はたまた依存心、執着心か、他の感情かもしれない。
ただ、
その感情に嫌な気はしなかった。
むしろ、それのおかげで、何かが満たされている気がした。
「A、」
名前を呼ばれたお前は、涙で濡れた瞳でオレを見上げた。
恐怖が滲んだ瞳は、真っ直ぐにオレを捉える。
オレだけを。
その恐怖がなければもっといいのだけれど、まあ、今はいいや。
もう少し経てばオレがいなきゃダメになるから、その恐怖も直に消える。
「お前が見ていいのは、誰だ?」
答え合わせをするように、そう問いかける。
お前は、小さく口を開け、オレの名前を口にした。
「それじゃあ、触れていいのは?声を聞かせていいのは?関心を抱いていいのは?」
「…ああ、そうだ」
「…オレ、だけだ…っ」
快感か幸福か、背中にゾクリをしたものが這う。
「よく、出来たな」
「もう、他の人間に興味なんて、関心なんてないよな?」
お前は、ゆっくり頷く。
「ははっ、いい子」
「そうだよな、お前はオレだけいればいいもんな」
たとえ、それが本心じゃなく諦めから来た行動だとしてもそれでいい。
諦めを通り過ぎれば、今の言葉が、行動が本心だと思えるようになるに違いない。
まずは、外側から、徐々に。
前髪をかきあげながら頭を撫でると、お前はふっと目を伏せた。
オレといるのに、彼女の視界からオレが消える。
(…まだ、足りないのか)
「…今、何考えてんだ?」
一度瞬きをしたお前は、目を少しだけ見開いた。
数センチにも満たないほど顔を上げると、ゆらりと乱れた髪が揺れる。
それに煽られるように、自分がこのたった一瞬の間でも彼女の中から消えたことに苛立ちを覚えた。
「オレ以外のこと、考えるなっていつも言ってるだろ」
「ほら、何考えてたか言ってみろ」
彼女の顎に手を添え、乾いた唇を親指でなぞる。
その乾いた唇の隙間から、震えた息が零れた。
潤んでいる瞳が不安そうに揺れ、また縋るように真っ直ぐとオレに向けられる。
(ああ、その顔)
(オレに縛られてくれてるその顔)
「…今のお前、凄く可愛い」
オレの口から零れた言葉に、お前はまた目を見開く。
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林檎麻(プロフ) - お久しぶりです...!!リクエスト受け取ってくれてありがとうございます..!!とっても満足しました!! (2017年11月7日 23時) (レス) id: 5f64ee0b75 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ミユティさん» こちらこそありがとうございました!これからも彼に振り回されてやってください(笑 (2017年11月6日 22時) (レス) id: ccdc96260d (このIDを非表示/違反報告)
ミユティ(プロフ) - 久々の小見川くん、とても良かったです!!!!!良く考えたら小見川君のリクエストはこれで二回目ですね笑リクエストに答えて下さり本当にありがとうございます! (2017年11月6日 21時) (レス) id: ffac928163 (このIDを非表示/違反報告)
ももか(プロフ) - 不雲綺さん» そうだったんですか、全然大丈夫です!これからも更新頑張ってくださいね (2017年11月3日 22時) (レス) id: fd489c71d0 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ももかさん» 申し訳ありません。この作品は今リクエストいただいてるものを書き終えたら更新を一時停止する予定でして…リクエストは受け付けておりません。説明文にリクエスト中止と表記しておらず、申し訳ありませんでした。 (2017年11月2日 18時) (レス) id: d72d593e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年8月29日 17時