臆病×彼氏×依存= ページ1
: アユム :
「Aちゃん、AちゃんAちゃんAちゃんAちゃんAちゃんAちゃんAちゃんAちゃん」
傍にいない彼女の名前を何度も何度も何度も呼ぶ。
けれど返事が返ってくることはなく、スマホの向こうで女性の声のアナウンスが流れるだけだった。
「早く、早く…早く早く早く早く早く早く」
「出て、出てよ」
彼女の名前が表示された隣にある電話マーク。
そこをタップするたびに、爪が画面にあたって音がする。
その音が不安を煽り、吐き気すら覚えた。
「なんで、なんで出てくれないの…!?」
何度目か、またスマホの向こうで聞こえたのはアナウンス。
電話を諦め、次にメッセージアプリを開いた。
そこには電話の宛先同様に、彼女の名前しかない。
トークを開き、メッセージを送る。
(『今、何処にいるの』…『何処で何してるの』)
(『電話に出て』『返信して』)
(『会いたいよ』『会いたい』『Aちゃん、早く』)
(『君が傍にいないと』)
「おれは駄目なんだ…っ」
「君が、だから、早く、」
けれど、既読すらつかなかった。
額にじんわりと汗がにじむ。
重いような濁ったようなこの空気。
今までに何度味わってきたことだろう。
(『Aちゃん』『早く俺に会いにきて』)
(『早く』『お願いだから』)
何処にも動いていないのに、息が上がってくる。
何も変わらないこの状況に耐え切れず、スマホをベッドの上に投げつける。
壁にぶつかったそれは、同じように放り投げられている鞄の上に落ちた。
「Aちゃん…Aちゃん、何処…」
焦りに襲われる中、
もしかして、と呼吸が一度だけ止まった。
(…もしかして)
(おれは、捨てられたの?)
(おれはもう、彼女に、)
(必要ないと判断されて…)
(だから、だから電話も何も…)
「…やだ…」
喉で絡まっていた音が、震えて零れた。
「嫌だ、嫌だいやだいやだ、いやだよ」
パニックになった頭では、正常な判断が出来なかった。
癖になっているネガティブな思考回路は、一度走り出したら止まりはしない。
(Aちゃんに捨てられるなんて、そんな)
(Aちゃんが傍にいないなんて)
彼女の視界から、記憶から、心から、おれという存在が消えてしまうことが酷く恐ろしい。
(そんなの、おれ)
「生きて、いけない」
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林檎麻(プロフ) - お久しぶりです...!!リクエスト受け取ってくれてありがとうございます..!!とっても満足しました!! (2017年11月7日 23時) (レス) id: 5f64ee0b75 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ミユティさん» こちらこそありがとうございました!これからも彼に振り回されてやってください(笑 (2017年11月6日 22時) (レス) id: ccdc96260d (このIDを非表示/違反報告)
ミユティ(プロフ) - 久々の小見川くん、とても良かったです!!!!!良く考えたら小見川君のリクエストはこれで二回目ですね笑リクエストに答えて下さり本当にありがとうございます! (2017年11月6日 21時) (レス) id: ffac928163 (このIDを非表示/違反報告)
ももか(プロフ) - 不雲綺さん» そうだったんですか、全然大丈夫です!これからも更新頑張ってくださいね (2017年11月3日 22時) (レス) id: fd489c71d0 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ももかさん» 申し訳ありません。この作品は今リクエストいただいてるものを書き終えたら更新を一時停止する予定でして…リクエストは受け付けておりません。説明文にリクエスト中止と表記しておらず、申し訳ありませんでした。 (2017年11月2日 18時) (レス) id: d72d593e93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:不雲綺 | 作成日時:2017年8月29日 17時