風恋。

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「大倉以外に誰が止められるねん！
お前のAさんへの気持ち、
そんなもんやったんか？」


「・・・違う。
村上支店長なんかより。
俺の方が・・・」


「そうや、
既婚者のヒナなんかより、
お前の方がずっとAさんを幸せに出来る」


渋谷課長に背中押されて、
銀行を出て、バイクに跨る。


俺がAを幸せにしたい。





目の前の交差点。

信号待ちしてるAの赤い傘が見えた。


隣には村上支店長の姿。


土砂降りん中、
一つの傘に隠れるようにして、
二人は寄り添ってる。


バイク、路肩に停めて、


「A！」


大声で呼んでも届かへん。


信号が青になる。

このまま二人が、
俺の手の届かへん、遠くへ行ってまう気がして。

なりふり構わず、追いかけた。


雨が叩きつける、交差点のど真ん中。


「A！行くな！」


その腕を掴んだら、
赤い傘が風に舞い上がって・・・


スローモーションのように、
Aが、ゆっくりと振り返った。


「オー、クラ？
どうしたの？」


戸惑った目をしてて・・・


もう泣き出しそうやねん。


「どうもこうもない。
村上支店長と一緒には行かせへん。
もうずっと俺んとこにおれや」


信号が赤に変わる前に・・・

手を引いて、駆け出した。


振り返ったら、

Aが落とした赤い傘。

村上支店長がひらひらと回して。


「大倉！今度こそ、その手、離すなや」


叫んで、傘の下、
八重歯見せて、にやっと笑った。


え・・・？

どういう、こと？






Aを、バイクの後ろに乗せて、
雨の街を走り抜けてく。


俺にしがみついて、
Aが、背中で、何か叫んでるけど。


雨の音にかき消されて、
耳に届かへん。


けど・・・


ちゃんと聞こえた。


俺を好き、って・・・

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