Memory ページ34
「じゃあ……彼女は、本当に…」
「そう…。そして、彼女の約束すらも忘れて十二年間、あなたは生きてきたの…」
ソフィアは目を伏せる。彼女は母から、自分がいつ死んでも良いように、小さかったソフィアに兄妹の事を見ていてほしいと言ったのだ。まだ幼い村娘に、要求した。彼女は受け入れた。どこまで覚えられるか分からないけど、真実を彼らに知らせてあげられるようにする、と。
両親が死んでからの事も、母は想定済みだった。ただ、幼い兄妹に、危なくなったらチェルニゴフ家へ行きなさいと、いつも挨拶のように言って。
「彼女はまだ死にたいと思っているわ……その心象が、彼女の見た、血溜まりの風景ね…。」
「アルラーナが死にたいと思っていても、俺には…彼女を殺せない。」
「兄さん、嫌……お願い、殺して、お願い…」
「お前は、アルラーナじゃないな」
「え……」
「アルラーナの幼少期の姿をした、幻だ。」
「そんな事言わないで、私はアルラーナよ、兄さんのよく知っている、妹のアナよ…!」
「アルラーナは自分の事をアナと呼んでくれなんて、言うヤツじゃない!」
『よく言った、マスター。』
低い声が響き渡る。
「遅いんだよ。」
固有結界が割れ始める。外から攻撃しているんだろう。
「アルラーナ。お前は俺と踊った時、どう思った?」
「私、私は、まだ…踊ったことなんてないもの…」
「お前はもっと、周りを見ろ。死にたくないと思うような出来事が、たくさん隠れている。俺と踊った時、お前はこう言ったんだよ。」
「とっても幸せよ、ありがとうってね。」
心象風景が壊れる。白い風景が崩れる。もう一度少女の顔を見ると、シロツメクサの冠が白に戻っていた。
「ありがとう、兄さん____」
少女が泣きながら笑っていた。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白咲 アオン | 作成日時:2017年12月11日 20時