Psycho ページ28
「おや、これで終わりかい?アサシン」
「ふ……まさか…ここで倒れる僕じゃないさ…」
煌びやかな装飾に、手にはタクト。少しつり目がちの青年が、もはやここで自分の勝ちは見えているという風に目を細める。
一方の青年は地味な茶系のロングコートに身を包み、青色の目を悔しそうに瞬く。
風が通り過ぎて、青い目の青年の白い髪がふわりと踊る。
「僕だけは許さない…お前だけは、絶対に…マリーのためにも」
「素直じゃないなぁ……そういうところが気に食わないんだよ」
金髪の青年がタクトを振る。メロディが次々と奏でられる。
『マスター!宝具を…宝具を使わせてくれ!彼に勝つには宝具を使わなければ…!』
『えぇ…あなたが本当にそれを正しいと思うのなら使いなさい。』
戦闘場である木々の間でなびく翡翠の長髪。
『ありがとう…』
「覚悟しろ、キャスター!ラモール・エスポワール!」
「レクイエム・フォー・デス」
互いが宝具名を口にした時。森が揺れ、木々は喘ぎ、風が荒れた。二つの形が光となって闇に呑まれていった。
白髪の青年は考えた。あそこで彼女を殺さなければこんな心境にもならなかったのに、と。
金髪の青年は考えた。あそこで彼女を助ける前に死ななければ良かったのに、と。
二人は考えた。奴は、本当に自分と相容れない存在だ、と。
また、彼女が交友を深めなければ、こうやって彼と睨み合うことなく、友として在れたのに、とも思った。
一人の女性を巡る戦いは、どちらも愛故であった。
どちらも、彼女を愛していたのだ。ただ、出会い方が違っただけで。
もし僕が君だったら、どんなに幸せだったろう。何せ僕が彼女と出会ったのは、処刑台の上だったんだから。
殺してしまった。彼女の夫、自身が敬愛していた国王、ルイ十六世をも手にかけた。
後悔しかない。処刑人という職業柄、仕方ないのだろうけれど、彼らには謝っても謝りきれない。
聖杯に託す願いなど、声高にして言えるものじゃないが、せめて……せめて、最期に会いたかった…
「マリア………」
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作者名:白咲 アオン | 作成日時:2017年12月11日 20時