Black magic ページ11
「い、痛いッ……!!」
「アナ!」
対魔力の強いセイバーは難なく突破出来た様だが、肝心のマスターが魔力に対して耐久がないのはある意味好都合だった。
「循環せよ…循か…グッ……!」
急に肋がズキズキと痛み始めた。続いて腹部。息も荒くなる。目眩がしてきた。耐えろ。このまま自分が倒れればこの少女とセイバーによって殺される。それだけはあってはならない。少なくとも、アーチャーが生きているまでは。
セイバーは自分のマスターが苦しんでいる根本から断ち切ろうと考えたのか、まっすぐにこちらへ向かってきた。もう終わりだ。人間ならばともかく、サーヴァントとなれば、死ぬ、
と思った。思った時だった。なんの躊躇いもなく、死を受け入れていた少年の頭上に、赤い外套が見えたのは。
「アーチャー!?」
「流石に、今死なれては困るのでね。」
アーチャーが言葉を発した瞬間、身体が脱力するのが分かった。慣れない量の魔力を使った上に、黒魔術なんていう初めての魔術をしたのだから、倒れるのは当たり前だったが。
それを見計らって、セイバーは自分のマスターの脚に絡みついている黒魔術を引き剥がし、踵を返して去っていった。
床に倒れた。なんの抵抗もなく、意気消沈、といった感じで。
アーチャーが抱え起こしてくれるが、正直、肋や腹部がピンポイントで痛むので呻き声しか出ない。
アーチャーの脇腹からドクドク血が流れている。赤黒い、けれど不思議と綺麗だと思ってしまった。
「すまない。セイバーに隙を取られた」
「いや…俺の采配不足だ。あの時お前が来なかったら確実に死んでいた。」
「馬鹿な事を。心の中では死ぬまいとしていたようだが、顔は完全に受け入れていたぞ。」
「違いない。……すまなかった…」
「眠れ。少しは落ち着くだろう。」
「でも………アーチャーの…傷……」
「私はいい。君よりは身体が丈夫に作られているからな。」
嘘をつけ。俺よりも、もっと、もっと弱いくせに。自覚していないのか、それとも分かった上で言っているのか。もう既にその身体はボロボロで人一人の命を助ける事すら危ういと言うのに。
この英霊は見栄を張っているんだ。そうでなければこんな事を言わずに、お前が休んでいる間、自分も休んでおくなり言えるはずだというのに。
「お前は……バカだな……」
「そんな顔をして言うものではないぞ。マスター」
ぼんやりと霞む視界の中で、温かくて大きな身体に包み込まれて保っていた意識を手放した。
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作者名:白咲 アオン | 作成日時:2017年12月11日 20時