Summons ページ2
少年はペンダントを握りしめ、目を閉じて代々受け継がれてきた召喚詠唱を唱える。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
―――――Anfang
――――――告げる
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」
膨大な魔力消費。だが彼にはなんの問題もない。
目を開けて現れるであろうサーヴァントを待った。
「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ参上した。」
渋く低い声。赤い外套が印象的な大男が立っていた。
「む、何かね。そんなに黙りこくって。まさかとは思うが私が望んだようなサーヴァントではない、とでも言うつもりではないだろうな。」
首を横に振る。冗談。サーヴァントを召喚できただけで自分にとっては及第点だ。
こっちに来てくれ、という意味で手招きする。
講堂を出て、長い長い廊下を歩く。
外は雨。裸足で歩く廊下は幾分にも増して冷たい。弓兵の靴の音だけが長い廊下に響き渡った。
膝まである赤髪がユラユラ揺れた。
1つのドアの前に立ち、ドアノブを捻る。中は人一人分の寝床が用意されていた。清潔に洗われたシーツ、ロココ調装飾が施された家具。
ここはもともと召喚されたサーヴァントによって形が変わるようになっている。
「ほう、なかなか良い趣味をしているじゃないか。だが、1つだけ物申したい事があるんだが、いいかね?」
コクリ、と頷く。
「君は何故喋らない」
「話すことは、出来る。」
出来るが話す相手が約7年近く居ないもんだから、いつしか自分の声すら分からなくなって、自分が知らない自分の声を他人に聞かれたくないだけだったのだが。
弓兵が面白そうに、ほぉ、とこぼした。
「なるほど。このシーツの清潔さも、家具の明かりの灯り具合も全て君が魔力でやったもの。食料は指差しだけで買えたんだろう」
全て合っている。社交なんてして来なかった彼は少し面食らった。
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作者名:白咲 アオン | 作成日時:2017年12月11日 20時