Prologue ページ1
冷たい床。
かなり大降りの雨。
今まで暮らしてきたこの家は、150年も経とうというのに、未だ朽ちることなくこの地に脚を踏みとどめている。
客人が来ることはないというのに何脚も置いてある長椅子に1人腰掛けてはや5時間。
幼い頃から切られていない赤髪が揺れる。若葉色の目が暗む。睫毛が小刻みに震える。手足首は、枷によって無動。白い膝丈の服が風で揺らめく。
もはや神とも崇められそうな容姿の少年が、1人で教会のような講堂で項垂れていた。
彼は今から起こる儀式について時が経つのを待っていた。
ただ、彼はこの儀式に乗り気では無かった。"聖杯戦争"という戦争の内容を先祖代々から受け継がれてきたが、叶えたい望みもなし、魔力を温存出来る性質でもなし、はたまたサーヴァントとやらを限定して限界させられるような触媒すら持っていなかった。
この戦争で、多くの先祖が死んだ。彼の家系、アイソレーション家ではもともと魔力を持つ人間が少数しかおらず、遺伝も運任せ。一子しか産まれなければ存続は不可能とさえ言われてきた。
しかし、運がいいのか悪いのか彼、ノアード・アイソレーションは魔力を大量に生産、供給出来る体質として産まれたため、身内はおろか、家の持ち主でさえ畏怖し、彼を1人でここに住まわせ、魔力を強制的に制御させる枷を付けるようにさせた。
そろそろ時間だ。
服の中に隠していた青い、金色のラインが入ったペンダントを取り出して、少年は魔法陣の真ん中へと立った。
まるで長椅子に座っていると錯覚してしまいそうな観客に己の儀式を閲覧してくれと言わんばかりに。
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作者名:白咲 アオン | 作成日時:2017年12月11日 20時