０２：偽汽車 ページ3
汽車の光が近付く。
Aの眼鏡に光が当たり、爛々と反射した。
｢眩しくはないか｣と鴉天狗が彼女の視界を葉っぱで作られた扇のようなもので遮った。
汽車から電車のような明かりが出るものか疑わしい所はある。だが、妖怪たちの中ではこれが極々当たり前のことなのだ。
汽車が駅の前で止まる。扉が開くと同時に、駅員のような格好の男が顔を出す。
｢これは皆様、相変わらずで｣と白い手袋の着いた手を見せながら。
駅員の格好に違いないが、姿は人間のそれとは掛け離れている。
まず肌が真っ黒なのだ。まるで夜をそのまま固めたような姿をしている。
そして目は三角の形をしていて、ハロウィンの時に飾られるカボチャのようだ。……輪郭はすっと整っているのだが。
笑う口からは、ギザギザの歯が見えている。
何より顔の右半分が崩れたように無くなっていて、そこからは歯車や鉄線が見えている。まるでからくりの人形だ。
｢俺様が以前殴って出来た傷だな｣と猫又が偽汽車を見る度に呟くので、おそらく他愛ない喧嘩でああなったのだろうとAは思っている。
｢今日はそうだな。大蛇にでも会いにゆくか？
最近の奴はすこぶる機嫌が良いらしい。Aも会ってみると良かろう｣
鴉天狗がそう言いながら、扇で顔をゆっくりと仰いでいる。
猫又は｢俺様はアイツ嫌いなんだよ｣と口を尖らせながらいつもより悪くした目付きで吐き捨てた。
だがAは｢会いに行きましょう｣と言いながら汽車に近付く。
｢お荷物、お持ちしますよ｣と偽汽車が言うが、大丈夫と短く切り返した。
｢なんだ。決定事項かい｣
猫又はふわふわの毛を軽く爪で掻きながら、面倒臭そうに汽車に乗る。
──汽車の中は、彼ら以外は誰もいない。
｢特別なお客様ですから｣と偽汽車はいつもAたちに言い聞かせる。
話しによれば、鴉天狗の古い知り合いに当たるそうだが、詳しい話は聞かされていない。
よく手入れのされた座席は、座り心地が非常に良い。清潔感の溢れる汽車だが───やはり何処かおどろおどろしく、また不思議な雰囲気のある汽車だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 無気力アイスさん» ありがとうございます！！(*´ω｀*)そう言っていただけて大変光栄です(*´･ω･｀)bこれからも頑張ります！！ (2018年4月5日 17時) (
レス) id: f00a385698 (このIDを非表示/違反報告)
無気力アイス(プロフ) - 格好いいです！こういうのを探してました。 (2018年4月5日 16時) (レス) id: 5c8f78dfab (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます！オリジナル作品がランキング入りしたのは初めてですので凄く嬉しかったです！＼(^o^)／ (2017年11月26日 1時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高4位おめでとうございます！ (2017年11月25日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年11月24日 14時
