選手としてみた、されてみたサムライブルー編2【短編集】

メイド Ko.I ページ3

『···へぇ、なかなか面白いお方ですね』


口元に控えめな弧を描いてそう言ったのは、俺の専属メイドのAさん。


「"あなたのことが可愛くて仕方ないです"なんて文面、初めて見たよ俺。女の子から可愛いと思われている俺とは···」


Aさんはその端正な顔に微かに苦笑いを浮かべた。



『そう仰らずに。好きでいてくださっているのには変わりないのですから』

「うん、それは嬉しいんだけどさ···。明日口頭でお断りしてくるよ」



そう言うと、Aさんは目を丸くして驚いた。


『良いのですか、断ってしまって』

「いいのいいの。俺他に好きな人いるから」


彼女は小さくえっ、と声をあげた。俺は構わず続ける。



「博識洽聞(はくしきこうぶん)で頭脳明晰。一見ちょっと冷たいように見えるけど、実はとても思いやりのある優しい人なんだ」

『そうなのですね。滉様がそう仰るのでしたら、きっと素晴らしいお方なのでしょうね。陰ながら応援しておりますよ』



俺は思わず黙ってしまった。そんな俺を見たからか、Aさんは心配そうな顔をして声をかけてくる。


『滉様？どうかなさいましたか？』

「···いや、なんでもない。頑張って早く振り向かせなきゃって思って」

『ええ。嬉しいご報告、お待ちしてますね』


そう言ってニコッと笑ったAさんがとても眩しく見えた。





(requested by こあくま様)

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