特権 Kaoru.M ページ17
「よっ、A。一緒に帰ろ」
『···なんなの』
Aは冷たい声でそう言って前に歩きだした。
俺はすぐさま彼女の横に並んで一緒に歩く。
「今日はうち来るの?」
Aは無言のまま小さく首を縦に振った。
「おっけー、了解」
こんなふうに彼女はとことん口数が少なくて素っ気ないが、それは"周囲に俺以外の人がいるとき"という条件付きである。
玄関扉の鍵を解錠し、Aを家の中に入れる。
俺が扉の鍵を閉めると、Aは首に巻いていたマフラーをしゅるしゅると解いてひとつ息を吐いた。
『あーもう···めっちゃ疲れた』
「お疲れ。今日のA、授業中めっちゃ指されてたもんね」
『そうなんだよ。英語でも物理でも指されるってマジで何?私のこと嫌いなのかな?』
そうぶつぶつ文句を言いながら、Aはマフラーをたたんでカバンの中にしまった。
そして次の瞬間、彼女は俺に向かって両手をいっぱいに広げてこう言った。
『そういうことだからさ、薫。ぎゅーって、して?』
「···もちろん、喜んで」
そっとAを両腕で包みこんで、髪をさらさらと撫でる。
「よしよし、今日もAえらかったよ」
そう言うと彼女は目を細めて微笑み、俺の背中に腕を回した。
余すことなくAのありのままを堪能できるという、これ以上ない特権をくれた彼女にキスをして、静かに感謝の意を伝えた。
(requested by こあくま様)
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茜屋(プロフ) - kangarooさん» 良かったです🫶リクエストありがとうございました!! (5月16日 16時) (レス) id: 556e637f1a (このIDを非表示/違反報告)
kangaroo(プロフ) - 茜屋さん» リクエスト書いてくださってありがとうございます!!めっちゃきゅんきゅんしました...。 (5月16日 15時) (レス) @page29 id: a52eba175e (このIDを非表示/違反報告)
茜屋(プロフ) - kangarooさん» 承りました!リクエストありがとうございます!! (2023年5月11日 6時) (レス) id: 556e637f1a (このIDを非表示/違反報告)
kangaroo(プロフ) - コメント失礼しますっ。リクエストで、傷跡シリーズの谷口書いてほしいです!いつもきゅんきゅんな物語ありがとうございます!! (2023年5月10日 22時) (レス) @page28 id: a52eba175e (このIDを非表示/違反報告)
茜屋(プロフ) - おさすみさん» 了解です!リクエストありがとうございます💞💞 (2023年5月9日 6時) (レス) id: 556e637f1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茜屋 | 作成日時:2023年1月30日 8時