選手としてみた、されてみたサムライブルー編2【短編集】

新婚 Ao.T ページ12

『新婚旅行？』

「うん。そろそろどうかなーって」


Aと籍を入れてから早1ヶ月。俺は思い切って新婚旅行を提案した。
すると彼女は指輪がはまっているほうの手で頬杖をつき、うーん、と唸った。


「どこ行きたい？」

『そうだなー、広島とか行ってみたい』

「お、いいね。広島は有名な観光スポットいっぱいあるしな。行こう行こう」

『やった！じゃあ、厳島神社は絶対行くでしょ？あとは平和記念公園も行くじゃん？それで···』



Aは子どものようにウキウキとした顔で、スマホであれこれと調べはじめた。

すると突然彼女はスマホの画面を俺に見せてきた。


『ねえ碧、この縮景園ってところ良さそうじゃない？ほら、この紅葉の写真とかめっちゃ綺麗！』

「ほんとだ。この夜のライトアップいいね。こっちの写真の桜も綺麗」


だよねー、と楽しそうに笑うA。あっ、可愛さで目がやられた。ありがとうございます。


ふと我に返って、壁にかかっている時計を確認した。
針は7時50分を指している。


「A、俺そろそろ行くわ。今日仕事終わったらるるぶ買って帰るね。じゃ、行ってきます」


リビングを出ていこうとすると、待って、と腕を後ろから掴まれた。

『ネクタイが曲がってる』


そう言ってAは俺の首元に手を置いた。


『···よし。これでOK！』


Aは再び口元を緩めた。その可愛さに見惚れていると、彼女と目がしっかり合ってしまった。
その瞬間彼女は赤面しながら目を逸らした。


『な、なに···』

「あ、いや···。なんでもない。ごめん」


俺もだんだんと顔が熱くなっていくのを感じた。

Aは数秒間置いて、恥ずかしそうな声で言った。


『い···イッテラッシャイ·····』

「あ、えっと···イッテキマス·····」



俺はこの胸のドキドキをなんとか抑えて、会社に向けて車を発進させた。





(requested by りお様)

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