才能 【ヒカル】

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肩をつんつんして見たり襟足を結んでみたり足をこちょこちょしたり色々試したが何も響いていない。



何だかホントに悲しくなってきて、項垂れてしまう。
名人は彼女よりもゲームなのかとか彼女じゃないあたしが思ってしまった。



｢…もういいもん｣


｢どしたん、｣


｢ずっとゲームしときなよ｣


｢あーちょっと待って｣



全然してないのにしてる風がすごく上手い。
無駄にリアル。



｢終わった、悪い｣


｢知らない｣


｢ごめんな、こっちおいでや｣



ほら、って自分の脚の間をとんとん叩く。
もうあたしより視界の端に映るロケマサと相馬さんと捧さんのニヤけがすごいんだから。
気持ちはわかるけど。



その場から立って名人の正面に移動する。
当然あたしの方がでかいから、自然と上目遣いになってる名人。
絶対これあたしの目線カメラ付けた方がよかった。
すんごく優しい表情してるのよ。



横向きで名人の脚の間に収まるように体を折り曲げて座り、少し上にある顔を見上げてみる。
清潔感ないって言われてたこともあるけど肌はめっちゃ綺麗なんだよね。



｢…何やねん、笑｣


｢なんもないよ｣



2人に静寂が流れる。
これ以上セリフが出てこず、まえっさんに目で合図を送った。



｢カットー！そこまでー！｣


｢えー！俺もっと見たかったんだけど名人の！｣


｢俺もっす！めっちゃ照れてたし！｣



ガヤは本当に名人の男な姿がお気に召したようで。
ぶーぶーとしばらくはロケマサと相馬さんで文句を言っていた。



｢名人どやった？こういうの｣


｢恥ずかしいっすよ、そら｣


｢てかAちゃんも可愛かったよねこれね｣



相馬さんにお褒めの言葉を頂きました。
光栄です。



それはそうといつもマシンガンみたいに話すヒカルが全然喋らない。
何か嫌なことがあったとしても動画のネタにならない公私混同は絶対にしない人なのに。



体調でも悪いのかと少し心配になった矢先、
画面外のヒカルは立ち上がってこっちに来始めた。
負のオーラを全身に纏わせて。

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