才能 【ヒカル】

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｢はっくしゅん！｣



盛大なくしゃみを1つ。
ただでさえ花粉症で鼻水やらくしゃみはひどいのに勘弁してほしい。



講習中も何度か窓側の席の人はくしゃみをし、震えていた。
その度に先生がごめんねーと謝ってくれるが先生が悪いわけではないので笑って誤魔化すしか出来ない。



講習内容は主に技術のこと。
基本のブリーチから始まる様々なカラーの方法を学ぶ。



うちのチームは頭が原色な奴が多いから、知っておくに越したことはないと今回申し込んだ。
捧さんに教えて貰ってもよかったんだけど捧さんもなかなかきっちりとれる時間がないということだったから。



原点回帰という感じがして、どっぷり美容師の世界に浸れるのは楽しかった。




60人ほどの2時間の講習を終え、密回避ということで後ろの席から順番に教室を出ていく。
あたしは割と前に座っていたから出るのが遅め。



まあ密回避なんて言ったってエレベーターに乗れるだけ乗っちゃうから、あんまり意味がない。



狭めのエレベーターに自ら詰め込まれ、耐えること4階分。



チーンと降りた先で何やら騒ぎ声が聞こえてくる。



｢え、やばいじゃんやばいじゃん｣


｢写真撮って欲しいんだけど！｣


｢本物？やばくない？｣


｢めっちゃイケメンじゃん！｣



人が人を呼び、どんどん集まりが多くなっていく。
芸能人が撮影でもしているのかと、精一杯背伸びをして見てみる。



…見えない。



160センチにヒールを履いていても見えないとは…
そもそも前の男がでかすぎて視界がこいつ1色なんだけどさ。



見れないならせめてこのビルからは出たいと思い、人を押しのけ押しのけ間をくぐってやっとこさ入口へ。
入口についても何かの撮影風景なんてのは見えない。



相変わらずワーキャーワーキャーと観衆の声が聞こえるだけだ。

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