74*和色。 ページ34
「でもね、この並びは全部洋色なんだよ」
「洋色？」
「うん、ヨーロッパとかで生まれて、名前がつけられた色たち」
「なるほど…」
「今はこれがメジャーになっちゃったけどねぇ」
智さんが、少しだけ寂しそうな顔をした。
「おれは、日本の伝統色がすごく好きなの」
「日本の、伝統色…」
「うん、例えば、藤色、とか紅梅色、とかねぇ」
頭の中に、一面に咲き乱れる藤棚と、まだ寒い季節に花を咲かせる梅が浮かんだ。
「今、想像したでしょ？」
「はい」
「平安時代の人も、おんなじだよぉ。そうやって想像して、色んなものを混ぜて、染めて、再現してみたの」
智さんの口元が、少しだけキュッと上がる。
「今のおれたちが、昔の人たちと同じ色を見てるって思うと、何だかロマンチックだよねぇ」
「はい…」
私たちの暮らす世界は、カラフルだ。
テレビだって、写真だって、白黒はとっくに卒業したし、
カラーコードとかカラーパレットを使ったら自分の好きなように色を作り出せる。
だけど、色に囲まれすぎた私たちは、そのひとつひとつが持つ意味なんて気にしなくなってしまって、
色彩感覚なんて技術の進歩の中でおいてきてしまったんだ。
でも智さんは、
それぞれの色が持つ意味も、景色も大切にしてる。
そんな考え、きっと智さんと出会わなかったら私は一生しなかったと思う。
「…私、幸せになった気がします」
「んふふ、それはよかったねぇ」
智さんはふにゃんと目尻を下げると、
私の頭に、ポンポンっと掌を載せた。
私たちはお目当ての木材を買って、こんなものもあるの？っていうような道具も買って、
もはや楽園みたいに思えてきたホームセンターを出る。
「おうちに戻って、大丈夫ですか？」
「うん、あーでもその前にぃ」
「その前に？」
「もうちょっと、ドライブしたいなぁ」
いい？って、
そんなつぶらな瞳で見つめられたら、
私はたぶん、何時間でも運転しちゃいますから！
「もちろんです」
「やったぁ」
智さんが嬉しそうに笑って、カチャンっとシートベルトを差しこんだ。
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璃夢(プロフ) - みっきさん» みっきさん、コメントありがとうございます。智さんのほんわかと優しさ、感じていただけて嬉しいです。私も書きながら癒しのパワーをもらってます笑 これからもどうぞよろしくお願いいたします♪ (2020年6月10日 0時) (
レス) id: 7d2e6a298f (このIDを非表示/違反報告)
みっき(プロフ) - 初めまして(^^)いつも楽しみに読ませていただいてます♪智くんのほんわかと優しい癒しオーラを感じて毎回読み終わったらほっこりしてます。次回更新も楽しみに待ってますね♪ (2020年6月4日 0時) (レス) id: 0364fca5be (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - かえるさん» かえるさん、コメントありがとうございます。お話楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪青い鳥の開設、今準備中なので、用意が出来たらすぐにお知らせしますね^ ^ これからもよろしくお願いします！ (2020年5月31日 0時) (レス) id: f209da7995 (このIDを非表示/違反報告)
かえる(プロフ) - いつも更新楽しみにしています！！差し支えなければ、智さんの新しいお家の見取り図が見てみたいです(^^) (2020年5月23日 1時) (レス) id: a9f7041f7f (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - ゆうにゃんさん» ゆうにゃんさん、コメントありがとうございます♪ ドキドキしていただけて、とっても嬉しいです。これからもどうぞ宜しくお願いします！ (2020年5月20日 9時) (レス) id: f209da7995 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃夢
| 作成日時：2020年5月17日 22時
