酔狂な賭け事 椿 【BL】【男主】

第九話 ページ10

玄関の扉ががちゃりと開く音。

俺はそれに反応するように、玄関の方に駆けだした。


『おかえり、葵さんっ』

「……っ、寄るな」


とげとげしい言い方だった。

いつもは「ただいま」って笑いかけてくれるのに、今日は下を向いて犬歯を噛み締めている。

何があったのかと一歩近寄ると、「おい」と低い声で。


「近寄るなって、言ってるだろ」

『葵さん、何かあったの』

「……、お前は気にしなくていいっ」

『だっ、旦那の心配をするのは、俺の役目でしょ！』


強気に言い切ると、「……参ったな」と葵さんは深い吐息。

顔を上げた葵さんは、熱に浮かされたような顔をしていた。


『！

あ、葵さっ』

「お前が悪い」

『ちょっ』


ぐい、と腰を引かれて抱き締められる。

それから甘くて深いキス。

咄嗟のことで何が何だか分からなくて、でも葵さんが求めてくるから俺はそれに応えるしかない。

舌を食まれたり、唇を舌先で舐められると、敏感に身体は反応してしまう。

とびきり甘くて、快楽に身をゆだねてしまう葵さんのキスは、まるで麻薬だ。


『葵さんっ』


キスが一度落ち着いたころ、俺は葵さんの肩を柔く押す。

すると、葵さんは細く息を吐き出しながら、脂汗が頬を伝うのをそのままに、無理に笑った。


「ダメだな、やっぱり変な気分になってしまう」

『な、何があったの』

「椿に、薬を盛られた。

見て分かると思うが、……そういう系だ」


忌々し気に顔を歪める葵さん。

拳は固く握られているものの、沸々とせり上がる欲に抗うことは難しいらしい。

頬を高揚させて熱い息を吐く彼に、俺の腹の奥はきゅうんと疼いた。


『いっ、……いいよ』

「何がだ」

『その、……無理、しなくていいよ』

「！」


する、と葵さんの頬に手を添える。

ちょっとだけ背伸びしてその唇に、ちゅ、と口づけて。

柔らかに微笑んだ。


『大変だったでしょ。

頑張ったね。

俺は貴方のものだから、好きにしていいんだよ』

「お前、どこでそんな誘い文句を……」

『嫌いじゃないでしょ？』

「……嗚呼」


葵さんは体制を変えると、俺をお姫様だっこして。


「……最高だ」


――
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二次創作のです

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