第三十章 ページ33
「……Aさん」
俺の目の前に座っているのは、若い一人のボディガード。
葵さんとまではいかないけれど、苛立ちを堪えるように頬杖をついた時に見える腕の筋は、日ごろの鍛錬を垣間見せる。
男はにこ、と微笑んで、とんとんと机を叩いた。
「そろそろ疲れませんか？」
『いいえ？』
俺はにっこりと微笑んだ。
後ろ手で縛られたきつい縄のせいで手首はもう麻痺しつつあるけれど、定期的に手を動かしてはいるためまだ使い物にはなる。
足にも重たい鎖を付けられているけれど、これぐらいで弱音を吐くほど俺は柔じゃない。
「こちらの要求をのんでくだされば、今直ぐにでも開放しますよ？」
『はは、面白い冗談を』
へら、と歯を見せると、男のこめかみに細い筋が一本入ったのが分かった。
酒の酔いから醒めて、気づいた時にはここに居た。
それからずっと、この有様。
ご飯の時だけ縛りを外しては貰えるけど、両脇に屈強なボディーガードが控えているから逃げることはできない。
「さっすが極道、タチが悪い」と思いながら天井の隅に視線をやると、男の盛大な溜息が聞こえてきた。
「簡単なことですよ。
柊 葵をうちの椿お嬢様に譲ってあげてください」
『お断りします。
葵さんを玩具みたいにいう人に、誰が渡すと思います？
そもそも。
……そういう貴方が一番音を上げそうに見えるんだけどなぁ、俺は』
「貴様……っ」
『叩くなり蹴るなり好きにすればいい。
ただ、俺の意思は揺らがない』
きっぱりと言い切ると、男は振り上げていた手を直した。
忌々し気に俺を見ては、間隔をおいて何度も舌打ちを繰り返す。
「……お前は男が好きなのか？」
『今の話、どういう経緯？
……まさか、そこに絶世の美女でも居れば薔薇の花束でも買って、直ぐにでも愛を囁くよ』
「なら」
『昔の話だよ』
『早とちりしないでよ、お兄さん』。
そう言って目を細めた。
『今は俺より薔薇の花束が似合う男が傍に居るので。
彼じゃなきゃ、俺はもう恋はしませんよ』
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空弥(プロフ) - 木の実☆（このみ☆）さん» 椿お嬢様あああああ(便乗)彼女はホントはいい子ですはい……。ありがとうございます！三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (
レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - アカツキ@鞠さん» ありがとん(ﾊｧﾄ)((某は三弾書いたでb (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - シェエラさん» ありがとうございます！ウルウルしてくださったんですか!？ほわあああ、嬉しい……。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - メロン大好き星人さん» ありがとうございます！私としても、書いてて面白い回でした。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 桔梗さん» ありがとうございます！こんな作品を楽しみにしてくださるなんて……、嬉しい限りです。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空弥 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/karaichi2422/
作成日時：2018年9月24日 15時
