I wish to be your only one … L.O.V.E

Precious Lover … ４８ ページ49

「宏光…」


本当に…そうなんだろう…


随分前…渉に言われたコトがある

あれは式を挙げた夜、アメリカに一緒に来て欲しいと言った時の事だ…今は行けないと断れ、オレはかなり凹んでいた、

渉に愚痴をこぼした時、教えて貰ったのは離れ離れで過ごした宏光の《１０年》だった

《キタミツにとって建築って仕事は、単なる給料を貰うための手段じゃないんだよ、お前との再会の日に、胸を張って会える自分がになる為の、…大切に守ってきたお前への愛そのものなんだ》


その言葉通り、宏光はひたむきに努力を重ねオレ達の《繋ぐ家》を完成させてくれた

《この家を訪れる人に、ゆっくりと流れる温かな時間を感じてほしい…例えオレ達がいなくなっても、この家がある限りオレと太輔が共に生きた時間は繋がれるから…》

そう言って、一つ一つの部材を2人で選んだんだ…


それでもオレは、言うしかない
何の役にも立たない気休めの言葉だとしても…

「今は、自分のカラダを治すことだけでいいよ、他のコト考えるのはやめよ…」

宏光が欲しい言葉がこれじゃないのは、痛いほど分かるのに…、無力さにギュッと自分の手のひらを握り締め唇を噛んだ

そのオレを宏光の瞳が捉えていた

「だよな…悪ぃ、ゴメンな太輔、荷物頼んでいいか？」
「うん、取りに行ってくる…待ってて」
「おう、気をつけてな、…オレなら大丈夫だから、お前少しウチで休んでこいよ…、寝てないんだろ？」

手を伸ばしてオレの頬に触れると、心配しかない表情を見せてきた

《患者さんは、自分より家族の心配するんだ…》


裕太の言う通りだ…こんな時まで宏光はオレのコトを気にかける、自分の置かれてる状況を一番よく分かってるのは宏光自身なのに…

「…そうか、なら少し寝てくる…最後の面会時間には来るからな、いい子して待ってろよ！」

宏光のアタマぐしゃぐしゃかき混ぜると、唇尖らせてオレを軽く睨んだ

「ばーか！…あのさ、冷蔵庫に横尾さん持ってきてくれた料理が何個か入ってるから、それ食べて来い、…お前ちょっと痩せたんじゃねぇの？カラダ大丈夫なのか？」


頬から肩に手を滑らせながら、気遣うように聞いてくる、その手を掴みそっと薬指のリングにキスした

「太輔…」

「オレは大丈夫、ひろの顔見たら…ひろがいてくれたら、オレはいつだって元気だ…、それだけは忘れないで…」


今までも、今も…そしてこれからも…



お願い…


頼むから、オレの目の前から消えていかないでくれ…

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