雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：２３ ページ37

ボチボチ店閉めなきゃな…

最後から２番目のお客さんを送り出してから２０分…

｢マスター、あの人大丈夫？寝ちゃってるよ｣
｢…ハハ、そうですねぇ、…まあ閉店時間までに起きなかったら何とかしますよ、お気遣いありがとうございます｣
｢このお店スゴく感じがいいし、料理も美味しいから今度は友達連れてきます！｣
｢気に入って下さったら何よりです、どうぞお気を付けて、またお待ちしてますね｣
｢ありがとう、絶対来るね！｣

そんなやり取りをしていても、その客は起きる気配が無い…

起こすの可哀想だけど、仕方ないか…

オレはカウンターの端っこでテーブルに腕を乗せ突っ伏してる客の傍に言った

｢…佐倉、起きろよ、…もう閉店だ…｣

声をかけても起きる気配は全くない、仕方なくちょんちょんとほっぺたを指先で突っつくと、やっとこさ目が開いた

｢起きたか？悪いな閉店時間だから｣
ボンヤリとした表情で枕替わりの腕から顔を上げ、周りを見渡した、そのうち意識が戻ってきたのか｢あ…っ｣て顔してカウンター内のオレに顔を向けた

｢ごめんなさいッ！…私また閉店まで…やだホントにゴメンッ！｣
｢いいよ、ずっと寝てたから他のお客さんの迷惑になることもなかったし…ほい、眠気覚ましにどうぞ、柚子ハチミツ！エアコン効いてたからカラダ冷えてんじゃねぇの？｣

｢…ありがと…、ｸｽ、ダメだなぁ私、何回目だろこのクダリ……あ、美味し…｣
｢いいんじゃね？ま、同級のよしみで見なかったことにしてやるよ！｣
｢ホントにゴメン…｣
｢謝んなくていいよ、ウチの店に来ることで少しでも元気出せんなら、オーナー冥利に尽きるし｣

寂しそうな笑顔を浮かべ、またホットドリンクにゆっくりと口を付けた

店をオープンするにあたって、オレは宣伝を兼ねてSNSにアップした

流石ネット社会…と言うか、それを見てくれた学生時代の友人や知り合いが来てくれるようになって、時々同窓会的なノリで店を使ってくれたり、そこから次のお客さん紹介してもらったり…

１０席程度しかない小さな店だけど、それなり忙しい毎日を送れるようになった

佐倉菜月が来てくれたのはオープンして、ちょっと経ってからだったかな…

高校の時はあんまり接点がなくて、ホントに顔見知り程度だったけど、佐倉は転校した事情が少し込み入ってたから、殆どその頃の知り合いとは連絡取り合ってないらしく、ここに来る度当時の話を楽しそうに聞いていた


でも、それがある日を境に変化した…

RHAPSODY：２４→←RHAPSODY：２２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す