雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：２０ ページ34

｢…何ですか？｣

気になって尋ねると、横尾さんはちょっと目元を細めて口を開いた…

｢いえ、アナタの物思いに耽る顔…益々太輔に似てると思って…アイツも一人でいる時よくそんな表情してました…何かを思い詰めたような、ひどく物哀しい顔……双子ってそんなトコまで似るもんなんですね…｣

言葉の奥に何か含みを持たせような言い方だ…

｢…ソレはどういう…｣
問い返そうとした時…

｢ねぇワッター！オレお腹空いたッ！なんか作ってよぉぉ！｣
タイミングが良いのか悪いのか…ジンライムを軽快に飲み干した二階堂が横尾さんにお強請りを始めた

｢オレも腹減ったァ！｣
｢宮っちもペコキューでござる｣

ソッコーでソレに乗っかる二人

横尾さんは！まるで小学生もどきの３人に苦笑いしながらチラリと僕に目線を向けた後
｢そうだな、なにか作ってやるよ、待ってろ｣
と言い、店の奥のキッチンスペースに入っていった、オープンキッチンに近い形…デザイン性の高い冷蔵庫から何やら食材を取り出した

ある程度下ごしらえはしてあるみたいで、直ぐに店の中は美味しそうな香りが立ち込める…

トマトソースの香りだ…

｢ほら、とりあえずナポリタンと水菜と蒸し鶏のサラダ｣
｢うお、美味そう！｣
｢ニカ、《美味そう》ではなく…｣
｢｢｢美味いんです！｣｣｣

息ピッタリ食い気味に返事をする３人、イイ感じに酔ってるのは二階堂と千賀…宮田はウーロンのクセにテンションは高め…

取り留めのない横尾さんと３人の会話…

ここのところ色々なコトが有り過ぎて、知らず疲れを覚えていた僕には、この時間は《如月の跡目》でも《専務》でも無い素の自分に戻してくれてる様に思えた

適当に相槌を打ちながら酔っ払い２人＋シラフ１人の相手をしてると、唐突に二階堂がガシッと僕の両腕を掴んできた

｢ど、どした？｣
｢せんむぅ！！オレらせんむのコト大好きっス！愛してますぅ！せんむに幸せにらって欲しいってオレら思ってまふからぁぁ！｣

もはや呂律も怪しいほどの酔いっぷりに全員が苦笑い、でも…

｢うん、ありがとな…｣
｢らからぁ、せんむもガマンしらいであの人に会ったらいいれすからぁ、まじツラいっす見てんの…｣

ボロボロ泣きながら僕にそう伝えてくる二階堂…

｢お互い好きあってんのわかんのに…ろして会ったらダメなんれすかぁ？…オカシイっすよ…｣

その涙声の呟きに、何も返せなくて…

｢ニカ、…専務困ってるよ…｣
｢だってさ…ッ！｣


ＰｒｒｒＰｒｒｒ…

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