雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：１７ ページ31

｢まだ千賀達来てないんですけど、先に入っとけばいいと思います！｣

車を置いて戻ってきた二階堂…

店の前で待っていたオレを促し、木製のドアを開けた

慣れた様子で入っていく二階堂の後ろに付いて店に入ると、イイ感じに配置された照明の灯りが店内の雰囲気を柔らかく和ませていた

カウンター内で寡黙にグラスを磨いてる男性が一人…スタッフはおらず、彼が１人で相手をしているようだった、１０席程度のカウンターのみの店…

｢ワッター来たよ！｣

二階堂のデカめの快活な声に、男がコッチを見てくる

｢よう、ニカ！いらっしゃい｣
｢うん、こんばんは！後から千賀達も来るから｣
｢ハハ、また愚痴吐きか？それとも漫才か？｣
｢酷でぇなワッターｗｗｗあのさ、今日もう一人連れてきた…ウチの専務！｣

二階堂に促されて僕に顔を向けた男の表情が、瞬時に強ばるのがわかった…
限界まで開かれた瞳と、寄せられた眉根…
声にならない驚きが開いた唇のカタチで読み取れた

｢…ワッター？どしたの？｣

緊迫した空気を動かしたのは、オレと共通の記憶にある名前を発したオーナーの呟きだった

｢……ウソだ……ッ、…オマエ…たい、すけ……なのか？…｣





｢…そうですか、太輔の双子の…、なら似てて当たり前ですね…改めて初めまして、《横尾渉》と言います｣

《横尾渉》さん
確か前に北山さんから聞いたコトがある…
太輔の高校の同級生だった…

頼んだシャンディガフをカウンターに置きながら、オーナーの《横尾渉》さんは少しだけ寂し気な笑顔を浮かべた

｢…いえ、でもこんな場所で太輔の同級生に会うなんて、ホントに驚きました…｣
｢オレもですよ専務、世の中広い様で狭いって言うけどマジで狭いッス！｣

二階堂が僕と横尾さんを交互に見ながら、うんうんと頷いた

｢まさかオマエ達があの《如月組》の関係者なんてな！｣
｢あ、ソレは黙っててゴメン…｣
｢いいよ、まあソレっぽい輩だろうなとは思っていたけど、…ニカも健永も宮田も全員いい子だからな！｣

そう言って照れ笑いしてる二階堂に横尾さんはパチッと片目を瞑って見せた

そして、僕に向き直るとニコッと笑いかけてきた

なんだろう…この既視感は……
この人の笑った顔は、なんだかとても懐かしい…

｢…横尾さんは、太輔とはどんな間柄だったんですか？｣

僕の問いに、横尾さんの静かな声がした


｢…親友でした…、後にも先にも、太輔ほど信頼できる友人はもう出来ないと思います…｣

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