雪華 … Snow Crystal ５

RHAPSODY：１３ ページ27

｢…違うと言ったら、菜月は信じてくれるの？｣

向けられたその言葉に、私は雅喜の頬を打った


雅喜の言葉は残酷だった…

そうだと言われても、違うと言われても、私にとってはどちらも同じ意味しか持たないことを知っているから…


もう、この人は私の所には二度と戻ってこない…

認めたくない《リアル》が、私の中にもう一人の《佐倉菜月》を創る…

どうして…こんな風になってしまったの……？
ついこの前まで、雅喜は私だけの雅喜だった…

二人で想い出を重ね、記念日を作り…雅喜の隣にいられるささやかな幸せを私は喜んでいた

この先もずっと…雅喜と二人で時間を繋いで行くコトを夢見ていたのに…


そう…

あの人が…いるから…────

７年前も今も、いつもいつもあの人は私から大切な人を取り上げる……自分は何も悪くないような顔をして…、藤ヶ谷くんどころか、私の雅喜の愛まで独り占めする…ッ


許せない…

絶対に、私は許さない……────



あんな人…


壊してしまえばいい…


壊れて行く《私》と同じ様に…


私が、その存在を



そのカタチが見えなくなる程、黒く黒く塗りつぶしてあげる…



今なら…わかる…


隼人の気持ちが…



今の私は、あの時の隼人と同じ…

雅喜をどこにもやりたくない、誰にも渡したくない…
雅喜の全てを自分のモノにしたい


私だけしか…その目に映さないで……ッ



｢菜月…？｣


雅喜の声…
優しい…穏やかな声音…大好きな声…

私を抱きしめ、二人の距離を零にしてくれたその唇が、私ではない人に触れていく…


有り得ない…そんなコト…


｢…雅喜、私は…アナタと北山くんを幸せになんか絶対しない…｣

｢いいよ、…気が済むまで僕を憎んでくれて構わない…だけどお願いだ、北山さんは関係ない…コレは僕が一方的にキミにしてることだ、憎しみの矛先は僕だけに向けてくれ｣


ほらね、…最後の最後まで…雅喜が想いを掛けているのは北山くん…



雅喜…

アナタ知ってる……？


最大の復讐は、その人に向けるものじゃない


その人が心から守りたいと思うものを、目の前で破壊するコトが…



一番の…復讐なの……





｢…私を怒らせたアナタが悪いのよ……さよなら、雅喜……｣



そして、またね………





｢…ふーん………、《如月》の跡目のご執心は、てっきりあの女だと思っていたが……ｸｽ、やっぱりそういうコトか……｣

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