I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:５４ ページ6

｢ひろ…目ぇ覚めたのか？分かる？｣

ボンヤリした視界に声だけが聞こえる…太輔の声……？

｢たいすけ……？｣
｢そう、大丈夫か？気持ち悪いとか無い？｣

今の自分の状況がよく分からなくて、オレは瞬きしながら部屋の様子と声の主をもう一度確認した

｢え、…ココ…なんでお前いんの？え、仕事は？｣

｢お義父さんからひろが体調悪いから迎えに来てやってくれって連絡もらった、心配しなくても仕事はちゃんと済ませてきたよ、ここんとこオレも残業続きだから今日くらい帰らせてもらうよ！｣

そう言って、オレの頬に手を添えてくる
その手に思わず縋ろうとしてしまう自分が堪らなくイヤだった…

太輔の優しい眼差しから逃れる様に顔を背けると、フワリと手が頭に添えられて指先が髪に絡んだ

｢しんどいか…トラブル、続いてんだってな…｣
｢…知ってんのか…｣
｢少しだけな、オマエの様子がいつもと違うからお義父さんに聞いた…｣

太輔だけには、こんなオレのコト知られたくなかったのに…

｢そうだよな、おかしいよな…洗い物も洗濯物も何も出来てなくて…全部お前が気付いてしてくれてるもんな……今朝だってさ、アイロンしてないクシャクシャのシャツとか着せたし…お前が洗濯してくれなかったら、そのシャツすら無かったんだ……ｯｸ……結局オレは、仕事も家のことも…何も…満足に出来ないんだ……｣


悔しくて…情けなくて……今涙流してる自分すら許せなかった…オレは唇噛んでそんな現実から目逸らすように額の前で両腕を交差し目を覆った

｢太輔のコト…全部オレがして上げたいのに…毎日ゴハン作ってあげたい、掃除したキレイな部屋に迎えてやりたい…ちゃんとアイロン掛けたシャツ……着せてあげたいのに…どれ一つ満足に出来ない…仕事だってそうなんだ…空回りばっか…クレーム一つ処理できない………チーフのクセに、事務所の仲間だって守ってやれない……ッこんなオレ、どこにもいる意味…無い…｣

｢ひろ…｣

｢オマエは大事なもの全部…アメリカに置いてオレんトコ帰ってきてくれたのに、…オレは何一つオマエに返せない……せめて居心地のいい場所だけでも作ってやりたいって思っても…何にも……出来ない……太輔、ゴメンな……ッ…｣

もう頭の中がぐしゃぐしゃで、何も考えられなかった、無力感…今のオレにはそれしか無かった



｢なら仕事やめろ、さっさと辞めてウチでオレのことだけしてりゃいいだろ、オマエ1人くらい、なんとでもなるんだから｣

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