I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:９２ ページ46

｢宏光のご両親…子どもの頃に離婚してな、アイツは母親と親戚の家に移ったんだ、けど母親は直ぐに宏光置いて出ていって…アイツは誰からも歓迎されてないことを肌身に感じながら、その家でずっと暮らしてた…｣

藤ヶ谷さんがぽつりぽつりと話してくれたチーフの生い立ち、ソレはとても哀しく寂しいものだった、そしてその中で生まれ、繋ぎ合わせてきたこの２人の絆の強さも痛いほど胸に伝わってきた

｢家族になれただけでいいだろうという人もいた、だけどオレは…それだけじゃイヤだった、アイツはオレのタカラモノ…絶対に隠したりしたくなかった、誰に対してもオレの大切な家族だと伝えたかった…籍を入れることで公の場でもソレを言える様にしたいと思った、…だけど、その事で宏光がプレッシャー感じてたんなら、本末転倒なんだよな……あ、悪ぃ、堂々巡りしてんな…ダメだなオレ…｣

ﾊｧ…とため息をつき、苦笑いをオレに見せると手元の赤いアイシングのかかったハート型のケーキを一口食べた

｢…相変わらず美味いな…｣
ってホッとした笑顔を見せる

この人は本当にチーフを大切に思ってるんだ…
この人に愛されてるからチーフは、あんなにもキレイな笑顔を浮かべるコトが出来るんだろう

｢藤ヶ谷さん…｣
｢ん？｣

｢オレ…チーフのコトが今でも好きです…｣
｢うん…｣
｢出来るなら、どんな手を使ってもアナタから奪いたいと思ってました…無理矢理でもオレのモノにしたいって…このまま傍にいたら、いつか…｣

ソコからなんて言えばいいのか…言葉に詰まってしまった…言いたい気持ちはあるのに、どの言葉が一番ピッタリとハマるのか、わからない…

藤ヶ谷さんは、そんなオレを真っ直ぐに見ていた、その目には怒りも憤りも無く、オレのホントの心を読み取ってくれようとしてる優しさがあった

｢事務所を辞めるのはその為？…傍にいたらひろを傷付けてしまうから出ていくの？｣


｢…その気持ちが全く無いとは言えません、…でもきっとオレが好きなのは…藤ヶ谷さんのコトが好きなチーフなんです…いつもあなたのコト一途に想ってるチーフ、だからアナタから奪い取ったチーフは…もうオレの好きなチーフじゃないんです…｣

｢葉山くん…｣


｢藤ヶ谷さんのコト話したり、思い浮かべてる時のチーフ…とても…キレイな笑顔を見せるんです……ホントに、全身でアナタに恋してるって言ってる…悔しいけど…その笑顔に惹かれます…｣


ずっと…笑っててほしい…

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