I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:８９ ページ43

｢コラ渉、ナニ言ってんだよ？…ったく、…葉山くん、コイツがさっき話したオレとひろの親友…んでココのオーナーシェフだよ｣

藤ヶ谷さんは苦笑いを浮かべ、声をかけてきた人をクイクイって指さした

ココの制服なんだろう…オレンジ色のチェックのエプロンを付けて、ベージュのキャスケットを被った細身の男の人が、笑いながらオープンキッチンから出てきた

｢初めまして、横尾渉といいます、今日は来てくれてありがとね｣

いきなり《恋敵》とか言われて固まってしまったけど、オレに向けられる感じのいい笑顔がこの人の人柄をよく表してて、ちょっとホッとした

ざっくばらんでウエルカムなこのオーナーの雰囲気は、カフェのそこかしこに表れていた

｢初めまして、…葉山璃久です｣
｢おお、話には聞いてたけどやっぱデカイな！身長何センチ？｣
｢…一応…189です…｣

なぜだかカフェのお客さんとかスタッフさんからも、｢でけぇ…｣のヒソヒソ声がしてて…

｢そりゃキタミツが隣にいたら、アイツのサイズ感なら最強に可愛いだろうよｗアハハ、惚れんの無理ないわ！太輔ダンナ、頑張れよ！｣
｢渉うっさい！余計なコト言わなくていいから！、あのさ、なんかこの子にオススメ食べさせてやってよ｣
｢おう、任せとけ！｣

オレとしては、何をどう言えばいいのか分からくてその場に立ちっぱしてると、藤ヶ谷さんは笑いながら奥の席を指差した

４人がけの席…
トレンチコートを脱いでスーツ姿になる

一目で上質の生地だと分かる濃紺のスーツ…
その着こなしは完璧で、こんな些細なコトからでも、ホントにオレなんかとは格が違うことは一目瞭然だった…

ジャケットを脱いでネクタイ緩めると、気持ちも解れたのかふぅーて息を吐いた

オレと目が合うと、作り笑いじゃない笑顔を向けてくれた

向かい合って座ってるんだけど、何を話せばいいのか…

｢ん、どしたの？｣

｢あ…いえ、あの恋敵…って、オレは…｣
やっぱり気になって聞いてみた

ふと、藤ヶ谷さんの表情に変化が見える
｢ゴメンな、渉がヘンなこと言って…でも、そうだろ？｣

問い詰めるでも無く、かと言って非難してるワケでも無く、藤ヶ谷さんは穏やかな表情でそう聞いてきた

否定も肯定もどっちも違うような気がして、オレは言葉に詰まった


｢葉山くんが初めてだ、オレに真っ向から《大事にできないなら、オレに宏光くれ》って言ったの、…あの日オレ、スゲェ、…動揺した…｣

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