I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:８５ ページ39

｢…パクられたデザイン…雑誌に載ったの見てスグにオレのだって見抜いたって、聞いた…まあ主催者怒鳴りつけたのは…ありがた迷惑だったけど…｣

オレがそう言うと、予想外の内容だったんだろう、オヤジは目を丸くして、そして直ぐにゲンナリした表情を浮かべた

｢南條のヤツ、よりにもよってなんでそんな余計なコトを…｣

って、ブツブツ呟いてる…


こんなオヤジ、初めて見た…

気難しくて無口……仕事以外は全く興味を持たない冷たいサイボーグ…ソレがオレが今まで見てきた《デザイナー葉山章太郎》

けど今目の前にいるのは、不意に漏れ出た自分の人間ぽい部分にちょっと狼狽えてる、素のオヤジ……きっとこれが母さんがその瞬間まで愛した不器用な《夫、葉山章太郎》なんだろう

今なら、言えそうな気がした…

｢…誰もあれがオレのデザインだってコト信じてくれなかったから、それ聞いてなんか、…ちょっと嬉しかった…｣
｢…璃久…｣

｢なんでわかったの？…オレのって｣


ソレはホントに聞いてみたいコトだった

オヤジは少し考えてたけど、小さく頷いてひと言だけ答えてくれた

｢これでもオマエの父親だからな……｣


掛けられた何気ないその言葉に、どうしようもなく喉の奥が熱くなった…


｢ﾌﾟｯ……なんだソレ、答えに…なってねぇし……ッ｣

喉奥に溜まった熱のカタマリは、声でも息でもなく、温かい水分に変わり、頬を流れていく…

父さんは、俯き、嗚咽を抑えるオレを何も言わず見ていた…

顔を上げた時に見た顔は、ユリの花束を胸に抱き、母さんの遺影を真っ直ぐ見つめていた時と同じ表情をしていた


母さんの最期の言葉、オレは今も忘れない


｢璃久…父さんをお願いね…｣


あの日、…ポトリと最後の花びらを落とすように、逝ってしまった母さん…

家族の絆は、花が萎れたその瞬間二度と戻ること無く絶たれたとオレは思っていた…


だけど、その花はオレと父さんに《再生》と言う《種子》を残していった

母さんはもういないけど、その《種子》はもしかしたら、オレと父さんで再び育てることが出来るのかもしれない

《家族》と言う…花を…


｢璃久…｣


今のオレがやることは一つだ…


｢…父さん、全部終わらせたら、…オレは《HAYAMA》に戻るよ…｣

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