I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:７７ ページ31

｢…ｸｽ、…ホント…マジめんどくせぇ…｣

胸元にあった手が解かれ、背中に感じた温もりが遠ざかる…

唯一掴んだままの璃久の手が探してた資料を取る時に離れた、オレの手にそのファイルを握らせると

｢…欲しいの見つかったんでしょ、戻った方が良くないです？｣
｢…うん…、オマエは？｣
｢オレ、岸さんの頼まれモノあるんで…｣

そう言って、オレに背を向け違う棚に視線を向けた

その背中は、今のオレの全てを拒否していた…

｢先、戻るわ…｣

返事の無い璃久に視線を流し、オレはフロアに戻った

…何も言わなくても、璃久の気持ちは伝わってきた、オレに何を求めてるのかも…

だけど、ソレはオレが太輔に抱いていた想いとは違う…

きっとアイツは…ただ抱きしめて欲しいだけ…
幼い頃に貰えなかった安らぎを、オレに求めてるだけなんだ…

それを、恋と見間違えてる…

それに自分で気付くまで、オレがしてやれることは、璃久の気持ちに気付かないフリをすることだけ…

チーフとして、頼りない兄ちゃんとして璃久を見守るだけだった



地下倉庫から戻ってきた璃久は、岸と下らない可愛い掛け合いをしながら笑ってた…

璃久はすっかり事務所のみんなと馴染み、元々のポテンシャルの高さを発揮し始めていた

このままこの事務所で、その力を存分に発揮できればいい、岸も安井くんも…そしてこの事務所の仲間全員がそれぞれの夢に真っ直ぐ向き合える様にしてやるのがオレの役目…そしてもう一つのオレの…願い…


璃久と2人で手掛けるコトになった保育園の設計は、ココでの璃久の成長の第一歩になるだろう


オレは、アイツが抱えてる想いや葛藤を全部を乗り越えて、ひと回りもふた回りも大きな存在になる日を見てみたいと思った

今のオレがしなきゃならないのは、任された仕事を全力でやり遂げるコト、

製図板には、保育園の最後の一部屋…子ども達の《お休みルーム》が完成を間近に控えていた


小さな小さな…そして限りなく大きな命のカタマリ…
眠ってる時も目覚めた時も、その澄んだ目には、キレイで優しいモノだけを映して欲しい

その思いを込めて、オレは天井にスカイブルーの空と白い雲、そして七色の虹を描いた…眠りから覚めた時、一番最初に目に入る景色には未来への道しるべを感じて欲しかったから…


｢…出来た…｣

色鉛筆を置いた時、誰かが入ってきた…


すぐ後ろで立ち止まり、製図板をじっと見つめてる…


｢とっても…ステキです｣

｢サンキュ…璃久…｣

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