I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:５１ ページ3

その日から毎日、チーフは施行業者に謝罪に向かっていた

帰ってきた時の表情が、この件がかなり拗れてきてるのを伝えてくるけど、チーフは泣きそうな岸さんに｢絶対大丈夫だから心配すんな｣と笑顔で言い続けていた

所長はフランスでの会合でこの話を聞いたそうだけど、｢北山チーフに任せる｣と言っただけで動く気配は無さそうだった

たった一人クレームの矢面に立ち、毎日毎日謝罪に行って、帰ってきてから自分のクライアントとの打ち合わせや図面引き…

朝は一番早く来て、最後に帰る毎日…

家に帰ってるのかどうかも分からなかった


心配で堪らなかったけど、どうすることも出来なくて、ただ任された保育園のランチルームを一発ＯＫ貰えるように試行錯誤を繰り返しデザインするしか無かった


とりあえず、今日がチーフへの提出期限…

描き上げた何枚かのデッサンを持っていくと、チーフはデザインルームで、コーヒー飲みながら、製図版に向かっていた

朝から何杯目だ…何か食べてんのかな…
気になりつつ声を掛けた

｢チーフ、今大丈夫ですか？｣
｢…葉山か、いいよどした？｣
｢ランチルーム…一応ラフスケッチ出来ました｣
｢そっか、ありがと…見せてもらえる？｣
｢お願いします…｣


一枚一枚、丁寧に見てくれる

｢床の色…淡いオレンジか…素材も…うん、コレなら何か零しても拭き取りやすいよな、木目の腰壁とも合う、そか手洗場も近くに付けたんだ、そだな…この方が先生達が使い易い…いいと思うよ、手直しするとしたら木目の腰壁はコーティング剤をもう一度考えてみて、子どもは思いがけない行動とるから、キズの付きにくい汚れが落ちやすいものにしてあげて、あとはコレでいいと思う……コッチがテーブルとイスか｣

｢はい、子ども用の家具のデザインははじめてなので、どうですか？｣

｢テーブル、変わったカタチしてんな…モチーフはなに？｣
｢雲です、空に浮かぶ雲…｣
｢ああ、雲ね…｣
｢けど、コレ一辺だけ少し直線にしてて、この直線同士を合わせていくと…｣

サンプルの板を組み合わせていく…

｢あ、天使の羽？｣
｢そうです、チーフが園にいた赤ん坊のこと天使だって言ってたからソコからデザインしてみました、テーブルはバラバラでももちろん使えます…イスは座面のカタチを丸くして背もたれを羽のカタチにしてます、あと子どもでも持てる位の軽くて丈夫な木材で軽量化してます｣


｢スゴく可愛い…このデザインいいと思うよ｣

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