I wish to be your only one … Re:turn ２

Re:６３ ページ15

宏光を工務店まで送っていって、オレは近くの駐車場で戻ってくるのを待った…

たった一人、その細い肩に事務所や仲間の《これから》とクライアントへの想いを乗せて向かう宏光…四面楚歌に立ち向かわせるコトにオレの中に迷いや戸惑いが交錯するけど、コレだけは宏光がしなければならないコトだから…と車から降りる姿を見送った

オレには見られたくないだろうと思い、敢えて離れてる場所に止めて帰ってくるのを待った

オレにも何度か同じ経験がある…

前にも後ろにも進めない日々、悔しくて無力感に苛まれる毎日…何度話しても通いつめてもケンもホロロな対応、オレにはそれに東洋人と言うのも加わってたからちょっと厄介だった

けど、その中でオレを認めてくれた人も多くいて、その人達がその後のオレを引き上げてくれることも何度もあった

真摯に想いを告げれば必ず道は開ける…

キャリアを積む中で、トラブルとクレームは避けられない…宏光もそんな経験は何度もしてるハズだ…

オレは結果はどうあれ、ヒロには自分に負けて欲しくないと思った…


今のオレには待ってやることしか出来ない、そしてどんな結果になったとしても、同じ痛みを感じてやることしか…

最悪の場合…アイツは仕事を離れるコトを選ぶだろう、それでも宏光は宏光だ…何一つ変わらないオレの愛しい存在…


左手薬指のリングを見ながら、車窓の向こう側を見ていると、白いタオルを首に巻いた姿が見えた


俯いた顔…近づくに連れて見えてくる赤くなった目と鼻先…泣いてんのがすぐ分かる

ダメだったのか…？

心配で車から降りて待ってると、オレに気付いたのかスグに早足になった

目の前で立ち止まる…黒い瞳から涙が溢れポロポロと頬を伝い落ちていた…


｢…おいで…｣

両手を広げると耐えきれなくなったようにオレの中に飛び込んで来た

｢…けぇ……して…もらえた……｣
｢え…なに？｣

泣いてて、よくわからない……
カラダを離して顔を覗き込むと、微かに口許に笑みが浮かんでいた…

瞳にも、いつもの輝きが戻ってきていた

｢…契約……続けてくれる……｣
｢ホントか？｣
｢ちゃんと約束貰った…このタオル、そのシルシだって…棟梁言ってた｣
｢すっげぇやったじゃん！ひろ、よく頑張ったな！｣

感極まって、何度も頷き泣くだけのひろを、オレは両腕に包みこんだ


冷たい風に晒されいたひろのカラダは冷えていたけど、擦り寄せてくる頬に流れる雫はキレイで、とても暖かく感じた…

GAYASAKURAです。。感謝感激ぱにたん！→←Re:６２

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