雪華 … Snow Crystal ３

１３２話 ページ40

翌日、太輔は元気に登校してきた

｢この前はありがとな…｣
って言っただけで、殆どオレとは絡まないけど、横尾さんやクラスのヤツらに｢太輔夜遊びし過ぎ〜｣って、からかわれて、なんか嬉しそうな顔して軽口叩きあっていた

今では転校してきた時のあの尖ったハリネズミみたいなオーラはすっかり消えて、教室の当たり前の日常に溶け込んでいた

そして安定の放課後のカンスパ…

気付いたらもういなかったｗｗ



オレは相澤センセイの仕事終わりを図書館で待っていた、数学…苦手なんだよなぁ

なんで太輔は、あんな頭いいんだろ、
相澤センセイが、太輔がこの学校の編入テストを受けた時、全教科ほぼ満点だったと言ってて余計萎えた

釣り合わねぇじゃん…
あーオレも頑張らねば！

でも、…ムズい…オレの人生でいつかこの関数とやらを使う日が来るんだろうか……ハァ…

頭クシャクシャして、シャーペンをノートに転がし外を見た

冬の日暮れは早い…

さっきまでの夕日は明日の為におやすみ…外はもう濃紺の空に変わっていた


スマホのLINEが新着を教えてくる

内容を確認して、オレは待ち合わせ場所に向かった



｢お待たせしたわね、行こうか｣
｢はい｣

目の前に止まった車は黒のスポーツカー…
いかにも相澤センセイが好みそうなタイプ

左側の運転席でハンドル握ってる姿もサマになる

｢隣町なのよ｣
｢そうなんですか？｣
｢近くだとバレてめんどくさいもんね｣

電車でひと駅…車では20分くらい…

相澤センセイは、道沿いのファミレスの駐車場に車を止めた

｢あのガソリンスタンドよ、分かる？｣

通りを隔てたほぼ向かいのガススタ…

赤と黒のツナギにキャップを被った男が一人忙しそうに動いていた

俯いた顔を上げた時に見えたキレイな横顔のライン…

｢太輔…｣

入ってきた車を誘導しては、手際よくさばいてる…もう1人の人は、結構年配の人に見えた

何やら話をすると、太輔は奥に止まってる一台の車に向かい、洗車に入るようだった、大型のワンボックス…

吸い込んだ空気が鼻を刺激するほどの寒さ…

水で冷たくなった手を暖めるように、時折自分の手に息を吹きかけながら、洗剤やワックスを使って仕上げていく…

あの手の荒れは、このせいだったんだ
オレの為に…


｢北山くん、オレのために…って思わないでやって、太輔、楽しそうでしょ、あの子、アナタの笑ってる顔が好きだからって言ってた、だから最後まで黙って見守ってあげてね｣

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