雪華 … Snow Crystal ３

１２０話 ページ28

｢いずれあの２人の関係は破綻する、その時オマエは、太輔坊が傷付くのを見ていられるのか？今なら浅いキズで済む、ユリ、あの２人をこれ以上近づけるな！｣


龍樹の言うことが真実なら、ソレを知った太輔がどれほど辛い思いをするかは手に取るように分かる……私も、同じだったから…

｢…今すぐ答えは出せない、考えさせて…｣


助手席のドアを開け、私は外に出た…

冷たい冬の風が全身を包む…
心まで冷えきってしまうほどの…凍てついた…


龍樹と別れた日も、確かこんな日だった…


｢宏光に、雪の結晶見せてやりたいんだ…｣

いつも大人びた太輔に初めて浮かぶ、年相応の照れくさそうな笑顔

やっとあの子の望む毎日が過ごさせてやれると思っていたのに…こんなコトって……


｢ユリ…｣

立ち竦む私の背中に、龍樹の声が染み込んでくる…


｢…オマエは賢くて、優しい女だ…ソレはオレが一番よく知ってる…｣

｢…そして、愚かな人間よ…｣


それだけ答えて、私は歩き出した

答えなど、もう出てる…


走り出す車のエンジン音が、あの日と同じ様に
小さくなって行った…




私はその足で太輔のマンションに向かった


時々様子を見るためにセキュリティ解除は知っていたから、そのまま部屋に上がる

ドア横のドアホンを押しても何の反応も無い


｢まだ、帰ってないの…？｣

腕時計は結構な時間を示していた
高校生が働く時間じゃないけど…

何度かボタンを押すと、中から気配がする

｢…太輔？私よ、ユリ、いるんでしょ？開けて？｣


少しして、ドアが開いた

｢ユリちゃん…？なんで…｣
｢ん？たまにはご飯でもどうかと思って…｣
｢そう…ｺﾞﾎｯ...ｺﾞﾎｯｺﾞﾎｯ…｣
｢どうしたの？調子悪いの？｣

咳き込む太輔の頬に手を当てると、明らかに発熱の兆候

なのに薄手の長袖Tシャツとスウェットだけなんて…

｢熱あるじゃない！、いつから？｣
｢…わかんね…、バイト帰る時、なんかダルくてさ…｣
｢バカ、ほら早く部屋戻って！｣

支える様にして寝室に連れていく

暖房も何も入ってない部屋は、身震いするほど冷えきっていた

｢何この部屋…っ、とりあえずなんか着なさいって、あんたって子はもう…｣

エアコンつけて部屋を温める間、辛うじて温もりのあるリビングで待たせた、子どもにするみたいにクローゼットから持ってきた何枚かの服を頭から被せると、太輔が力無く笑う…


｢サンキュ…ユリちゃん｣
｢バカね…熱出すまで働くなんて…｣

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