雪華 … Snow Crystal ３

１１９話 ページ27

｢それはアナタが勝手に作ってる運命でしょ！太輔が望んでるモノとは違うわ、龍樹、…如月には雅喜がいるわ、今更…｣

言いかけた私の言葉は、龍樹から発せられる凄まじいオーラに続けることが出来なかった


｢いいかユリ、オレはお前にお願いをしてるんじゃない、辞めさせろと言ってるんだ、悪いがオレはキミの考えを受け入れる気など一切無い、太輔坊の人生を守りたいなら、お前に出来ることはただ一つオレの言うことを聞くことだ｣

運転席から身を乗り出し、助手席の私を拘束する様にシートに手をつく

鼻先が近づくほど寄せられた顔は、甘い微睡みの中で見つめていた龍樹とはまるで違う…殺気だった色を浮かべていた

今でも…私は…────


｢聞けない、断るわ！…アナタがそこまで言うなら、私は私のやり方で太輔を守る…姉さんがどんなに望んでも育てられなかったあの子を、私が守ります！あなたの好きにはさせない！｣

｢キミに何が出来る？…もう、時間は止められない…太輔坊が如月に戻らないなら、その時点で彼の人生は終わる……影のまま終わってしまうんだ、それでいいのか？｣


｢それが太輔の望みなら、それでもいい…如月の名前に翻弄されて亡くなった姉さんのコト、私は忘れてない…｣


｢太輔坊の相手が、藤ヶ谷のオヤジさんの命を奪ったヤツの息子だとしてもかッ！？｣


吐き捨てるような龍樹の言葉に、私は全身が固まった…


｢どういう…コト…？｣


喉の奥の塊を、呼吸で押し出そうとしても息苦しさが私を離さない…


｢…言葉通りだ、太輔坊が惹かれてるあの北山とか言うガキ、…アイツは藤ヶ谷のオヤジさんを排除する為の…裏切り者の息子だ｣

｢嘘…｣

｢だよな、偶然にもホドがある、…オレもまさかと思ったよ、あの男のヨメをココで見つけた時はな……よもや、太輔坊が…って｣


太輔の養父

私は会ったことは無いけれど、如月の傘下の組のトップだったと聞いていた

双子で生まれた太輔は、後々の跡目争いの元凶になるからと本来なら無かったことにされる命だった…

姉はソレを知り、必死で夫を説得した

影でいい…表舞台には決して出さないからどうか命だけは残してほしいと懇願し、幾分人間らしい感情を残していた義兄はソレを許した…

そして、絶対に自分を裏切らない人間を太輔の養父に選んだ

けど、その人も何かの理由で非業の死を遂げたと聞いていた



｢太輔坊は如月のトップにふさわしい唯一無二の存在…それがあんなガキと…｣

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