雪華 … Snow Crystal ３

１１５話 ページ23

｢ユリちゃんは、オレの大事な人だから…｣
そう言って相澤センセイを抱きしめた太輔…


目の前で見せられたその光景に、オレは一体何を信じればいいのか分からなくなっていた

オレに触れた太輔の掌、そして指先が、オレじゃない人の肩や髪、背中に添わされる…


｢…そか、オレじゃなくても…いいんだ…｣

無意識に漏らした呟きが、ストン…と胸にハマる


同じ想いで向き合えていると思ってたのは…オレだけか…なんだ…ﾍﾍ……
酷く自分が滑稽に思えた…

舞い上がって浮かれて…胸の中、溢れるほどの《好き》を募らせて…結局こうなんだ…

｢ｸｽ…バッカみてぇ…｣


靴履き替えて…そこからあんま記憶無い…気付いたら家に帰っていた


やたら今日風が冷てぇな…って思ったのは覚えてる

｢さみ…｣

家の中も寒い…どこもかしこも…寒い……
あんまり寒いから、なんか涙出てきた……

その人の名前を呼べば、暖かくなるはずなのに…その顔を思い浮かべればフンワリいい香りがして、温もりを思い出すことが出来るのに…今は同じコトしても寒くて…切なくて苦しい…


だから…もうしない…

名前も呼ばない
顔も思い浮かべない…


バッグの中で鳴り続ける着信音

太輔がオレを呼んでる…


やめろよ…
もうこれ以上オレを凍えさせんな…


やがて諦めたようにピタリと鳴り止むTEL…


そんなコトが幾日…何度か続いた…




｢ちょっと来いよ｣

強引に連れ出された校舎の屋上

2人だけの空間は、冬空特有の…どことなくうら寂しい雰囲気を醸し出していた

｢なんで避けんの？｣
｢オレが誘い断ってるから？｣

問いかけに答えるコトが出来なくて…太輔の顔を見たら余計に心ごと凍えてしまいそうで…オレは視線を外してしまう

｢どう言えばオマエは信じてくれんだよッ！｣

太輔の声が胸に突き刺さる
けど、あんな光景見せられて何を信じろっていうんだよ…ッ

口論の果て唇にぶつけられる熱

キリもなく熱さと共に重ねられていく想い
抗っても抗っても、太輔は離してくれない…

全身の力使って自分のカラダを引き離した


｢コレで分かんねぇなら、もう知らねぇ…ッ｣

そう言って太輔はオレを置き去りにして屋上を出ていった

後ろ姿が消えた瞬間、冷たいコンクリートに崩れるように座り込んだ


何を分かればいいんだよ…ッ

ずりぃだろ、いっつも…こんな風にオレに気持ち投げつけて…受け止めきれないの知ってて…




好きが消えないコト…思い知らせてくるんだ……

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