雪華 … Snow Crystal ３

９６話 ページ3

｢…入院…？｣
｢ん、少しゆっくりすればいいじゃん…オレなら大丈夫だからさ！…これから帰って入院に必要なもん持ってくるから、待ってて｣
｢アンタ学校は？戻りなさい、私なら心配無いから…｣
｢院長先生が連絡してくれてる、母ちゃんの病状伝えて今日だけお休みさせますって、いい人だよね院長先生、オレにもいつも優しいよ｣
｢…そう…｣
｢じゃ、後でまた来るね！｣




｢北山さん…気分はどうですか？｣

軽いノックのあと入ってきたのは院長先生だった、その手には食事の入ったトレーがあった

備え付けのテーブルに置くと、ベッドサイドのスツールに座り、診察をする

一通り終えると、安心した様に柔らかく笑った
コッチまでホッとするような笑顔…

｢院長先生、…勤務中に倒れたりして、本当に御迷惑お掛けして申し訳ございません……｣

｢それは気にしないで下さい、ユキさんに無理をさせてしまったのはウチの責任です、一先ず何事も無くてよかった、ひろくんがとても心配していましたよ、しばらくは…｣


その言葉を私は遮って、一番聞きたいことを口に出した

｢…私の状態はどうなんですか？｣

質問の答えは、彼の表情が言葉より速く確実に伝えてくる…やっぱり…

｢……正直、芳しくない…元々心臓が弱い上に無理が嵩じてカラダが悲鳴をあげる寸前です…今回倒れたのもその予兆だと思います…｣

予感が当たる…私も看護師の端くれだ…自分の状態は知りたくなくても分かってしまう部分があった…

なら、聞くことは一つだ…

｢私は…あと、…何年生きられますか？｣


彼の顔がハッとしたものになり、苦しそうに目尻を歪ませた

｢…無理さえしなければ、スグに命に直結とはならない、ユキ…お願いだから黙って私の援助を受けてくれないか、キミがこのまま弱っていくのを私は見ていられない…｣

｢秀司さん…｣
｢…キミが僕の為を思って離れていったコトに気づいていれば、こんなコトには…っ、ユキ…ゴメン…｣

握ってくる手の温もりは、最後に私を繋ぎとめようとした時と同じだった…でも、時間は戻らない…

私の心には、今も違う人がいる…

その人と夫婦として暮らした記憶は殆どない…
だけど、その代わりに私に託してくれた小さな命…

その命があったから、私は今も生きていられる…


｢ココで働かせてもらえるだけで、アナタには感謝しています、ひろと二人だけで生きてこれたのは院長先生のお陰なんです、だからもう私のことで苦しまないで下さい…｣

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