雪華 … Snow Crystal ３

１１０話 ページ18

｢コラ太輔！起きなさいって…もぉちょっと保健室不在にしたらすぐコレなんだから…｣

シャッとカーテンが開いて、窓から入る午後の日差しが寝ていたオレの視界を明るくした

｢…んァ…あ〜…ユリちゃん帰ってきたんだ、おかえり…ﾌﾜｧ眠ィ……｣
｢おかえりじゃないって、アンタいつからココで寝てんの？｣
｢んー昼休み…かな｣
｢はあ？あのねぇ、もう６限終わるわよ！さっさと教室戻んなさい！｣
｢…もう終わんの？ならもう少し寝させて｣

ベッドに潜り込んだオレに、ユリちゃんの呆れ返ったため息が聞こえた


｢…太輔、北山くん心配してるよ｣

その名前に、オレは微睡みかけた意識を戻した

｢アンタのコト…切ない目して追いかけてる、…学校済んで遅くまでバイトして、挙げ句授業サボリとか本末転倒でしょ、何考えてんの？｣

ポンて寝てるオレの手をアタマを軽く叩いて、ユリちゃんはベッドの端に座ってきた

｢バイトしてるって、なんで知ってんの？｣

オレの問いかけにユリが小さく息を吸った
そのコト知ってんのってアイツしかいないし…

｢…龍樹が、来た…｣
｢、松永、ユリちゃんのトコ行ったのか？｣
｢そうね…｣

ユリの纏う空気が、その名前で一変する…

｢…ゴメンな、ユリちゃん一番会いたくないヤツなのに…｣
｢ソレはいいよ、もう…終わったことだし…ﾍﾍ｣


無理やり笑おうとするユリ…けど、心のキズは癒えてないのはその瞳を見れば一目瞭然だった…

松永は、ユリの元婚約者だ…

２人の間に何があったのかは知らないけど、２人は結局別離を選んだ…気丈なユリが涙が枯れるほど泣き、憔悴しきっていたのを今でもオレは覚えている

｢バイトなんて何の為に？…お金が必要なコトがあるなら言ってくれたら私が…｣

｢…宏光にXmas…雪の結晶見せてやりたいんだ、昔藤ヶ谷のオヤジと言った場所…宏光連れてってやりたくて…その金貯める為にバイトしてる…｣

仕方なくホントのコト話すと、ユリは少しだけ驚いた顔した

｢そんなコト…口座から出せばいいんじゃないの？｣

｢それじゃ意味ねぇよ、ちゃんと自分で稼いだ金で連れてってやりたい…あんなゲスな金でなんか絶対イヤだ！｣

今までは何とも思わず好き放題使っていた…松永に対しての反抗心…根本にあるのはそんなカネで生かされてる自分への嫌悪感、けどソレを認めたくなくて…ガキの発想だよな



宏光との出会いがオレを変えた





好きな人に真っ直ぐ向き合える自分になりたかった

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