8 ページ8
瑞季は高専の時から決まった恋人がいた
恐らくああいうのを運命の相手って言うんだろうな、と他が割り込む余地がない程の
しかし、家の関係で呪力を持たない男との付き合いは勿論、結婚は到底認められたものではない
よく悲しい顔をしていたのを覚えている
では、今年入学した出来の悪い方の妹がより一層力を持つ子供を生む可能性が高ければ?
恐らく妹には好意を持たれている
そう確信していた
目がよく僕を追っていたから
事は思惑通り進んだ
僕と花子は結婚し、一年が経つ頃には瑞季も無事念願の相手と結婚することができた
悲しくもあったが、自分の働き故と自己満足に自画自賛していた
籍を入れてしまえば勝手にあれこれ画策されることも少なくなるだろう
花子との離婚を考えないのは、瑞季が実家横槍される可能性がゼロではないこと
…それと、花子に対する罪悪感に故だ
僕はこのことは誰にも話さず墓場まで持っていくつもりだ
…まあ硝子あたりは勘づいているだろうが口を出すヤツじゃない
「さ、名誉回復といきましょうかね」
呟きながらザバっと湯船から出た
「あー、美味しかった!」
「お粗末様」
カチャカチャと食器を纏めシンクに運ぶ花子
そのまま洗い始める姿は吹き抜けの向こうのこのテーブルからは丸見えだ
顔をじっと見詰めてみるがやはりいつもと変わりは見られない…さっき感じた違和感は気のせいかなと自己完結させる
「今日はごめんね、瑞季元気だったよ」
「そっか良かった…」
「折角の誕生日なのに台無しにしちゃったから又今度休み取ろうと思ってるんだ!いつがいいとかある?」
「…ううん、ないよ」
「じゃあ僕が勝手に決めちゃうよ〜」
「そうじゃないよ」
何処にしようかな〜、と考え始めた僕を余所に花子の先程までとは違う冷たい声が嫌に響いた
驚いて顔を上げると花子も洗い物をしていた手を止めてゆっくりと顔を上げ真っ直ぐに僕を見る
「…花子?」
「今日預かってた離婚届を出してきた」
「……は?」
いつも恋しそうに僕を見詰めていた瞳に今はその面影が見当たらない
そこには出会ったばかりと同じ、ただ無感情に僕を見詰める漆黒の瞳があるだけだった
「もうこんなおままごと終わりにしよう」
ね、悟
1583人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時