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「(……うーん…)」
「…ーーーゃん、花子ちゃん?」
「!」
意識が深みに引き込まれそうになった所で声を掛けられ思わず身体がビクつく
慌てて顔を上げればここ最近悟よりも長い時間を供に過ごしている男性…翔くんが不思議そうにこちらを見ていた
いけない…、今は翔くんと新しい喫茶店の偵察に来てたんだわ
意識の向こうで話し掛けられていたことに漸く気が付き自分を叱咤する
相手が目の前にいるのに違うことばかりに意識を取られるなんて失礼すぎる
「ごめんなさい。少しボーっとしてて」
慌てて謝罪すると、翔くんはニカッと笑った
「ははっ!少し心配になっただけ!うちで働き始めて一ヶ月経ったけどどう?やっぱ疲れてる?」
「ううん…まだ慣れないことは沢山あるけど凄く楽しいよ。こうやって翔くんと一緒に喫茶店の偵察に来てお話ししたり、新しいメニューの試作をしたりするのも新鮮でとっても楽しい」
「……、へへっ!」
私が言うと一瞬翔くんは面食らった表情をしたが、直ぐに頬をやや紅潮させてニカッと人好きする笑顔を浮かべた
そのどこか懐かしい笑顔に胸の内が暖かくなる
私が今働いている喫茶店はマスターが身体を壊したことを切っ掛けに、現在はほぼ翔くんが経営を任されている状態だ
余談だがマスターの身体は回復したが、どうやら気分は隠居一直線で現在は若い時に楽しめなかった妻との時間や趣味に没頭中らしい
それには翔くんも苦笑いしながら、しかしどこか嬉しそうだった
…まさに自分が憧れている家族そのもので羨ましく思った
「それよりそれどんな感じ?」
翔くんの指差す先には私が頼んだナポリタンがあった
「…美味しいよ。でも私はもう少し甘みが抑えられてる方が好きかな…でも味に独特な深みがあって凄く美味しいよ。多分万人受けすると思う」
店員の耳に入らないように小声で伝える
「はは、花子ちゃんあんま甘いの好きじゃないもんなー。でもよくゲッロゲロに甘いお菓子つくってない?」
「…友達がすごく甘党で。だからいつでも食べられる様に作り置きしてるの」
「作り置きって仲いいなー」
「ただの腐れ縁ですよ」
そう、私と悟の関係を言葉にするならまさにその言葉が当て嵌まる
私は例えそれが偽りでもいいから悟の傍に居たかった
悟は姉が幸せになるために私という存在を傍に置く必要があった
言葉や文面は交わしてないが、凡そ契約結婚というものだったのだろう
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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時