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「まあ瑞季のことは関係ないよ!そうそう、花子!今度駅前通りに出来たカフェに一緒に行かない?!」
話題を払拭するための新しい提案に、洗い物をする手を動かしたまま花子は上に視線を向け思案する
「次の休みが被った時バイト先の人ともう一度喫茶店の視察に行くの。それが駅前って言ってたからもしかしたら同じところかも…えっと、何て言ってたかな…」
「ピアニシモ?」
「それだ、…やっぱり同じ所だった?」
「ん。ざーんねん!じゃあまた今度どっか別のトコ探してみるよ」
「ううん、ごめんね。気にしないで他の人と行ってきて」
だから花子と行きたいんだってば
伝わらないことにヤキモキしながら空になった皿を手に持ちシンクへ持って行く
花子はありがと、と言いながら受け取り洗いは始めた
そして花子の手が塞がっているのをいいことに後ろから抱き締める
「わっ」
「はあー、落ち着く」
「どうしたの?疲れてる?」
「まあまあかな!だから充電中ー」
正面から見上げるように僕を見る花子は返事の意味が分からない様で不思議そうにしている
しかし途中だった動作を思い出しシンクでの作業を再開した
ここぞとばかりに自分の頬を花子の頭にスリ寄せる
まるで開いてしまった距離を少しでも近づけるように
「ふふ、くすぐったいよ」
作業を終えた花子から小さく笑い声が聞こえ、僕はハタリと動作を停止させる
…笑った?
残念ながら僕には背を預けている状態なのでどんな表情か確認することは出来なかった
急いでずいっと前のめりになり花子の顔を覗き込むが時既に遅し、そこにはいつも通り無表情があるだけだった
確かに笑った!見逃した!!
嬉しさと悲しさの二段階パンチに複雑な心境になるが、取り敢えず今は笑ってくれたことを素直に喜ぼうと自分を諌めた
大丈夫
僕が壊してしまった欠片をひとつひとつ拾って少しずつ戻していけたら
きっと花子の心を取り戻せる
やり直せる
花子が辿々しい笑顔を向けてくれる
あの暖かい日常を
近い未来を想像し期待でジーンとする胸を押さえた
「好きだよ、花子」
「……」
「今回はしょうがないから職場の先輩ちゃんに譲ってあげるよ。今度また二人で出掛けてくれる?」
突然の告白に困り顔をした花子だが、続けた言葉に戸惑いながらコクリと頷いてくれた
僕はその様子に頬を緩ませ
「うん…今度は翔くんと約束する前に悟に聞くね」
固まった
……なんて?
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ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます!!是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます!!続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます! (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります!パスワードを教えて頂きたいです! (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました! パスワードを教えていただけないでしょうか? (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かのん | 作成日時:2021年2月26日 0時