20 ページ20
▼
「分かりました。…いえ、近くに居るので送迎は結構です…え？…結構です。………けっこ、」
ブツッ
「……」
何故？
電話を切った私の心情はその一言に尽きる
術師として再スタートを切って半月程が経つ
伊地知さんからの連絡で3級呪霊の討伐を言い渡された私は、現場付近にいたためそのまま向かおうとする
しかし何故か電話越しに焦った様子で引き留められ「送ります！待っていてください！本当に！！本当に！！！」と私の鼓膜を破らんばかりの勢いで叫んだ
電話の相手である伊地知さんは私のひとつ下の学年で、殆んど話したことはなかったが穏やかで心優しい性格をしていた人という印象だった
…過酷な労働が彼の性格を変えてしまったんだろうか…
とっくに通話の終了したスマホを見ながら同情の視線を送った
しかし直ぐにハッとし現在の位置情報を送信する
よく分からないがここで待つしかなさそうだ
買い物のため街中に繰り出していた私は通行人の妨げにならない様に端に寄り伊地知さんの到着を待つことにした
悟との関係を経ち切った私は淡々と日々を過ごしていた
起きて、寝ての繰り返し
しかし正直嫌ではなかった
心揺さぶられることがない日々
まるで昔へ逆再生しているように私の中の不要なものがポロポロと溢れ落ちていく
その度にどんどん心が軽くなる
…楽になった
暫くボーっとしていると、どこからともなく急ブレーキ音が耳をつんざき少し視線を動かすと黒塗りの乗用車が近くに止まっていた
急いで近付くと案の定、運転席に座った伊地知さんの姿が見えた
その顔は心なしか蒼白く、冷や汗が浮かんでいる
どうやら本格的に疲れているらしい
…無理して送り迎えしてくれないでいいのにな
小さく会釈をし、乗り込もうと後ろのドアを開ける
「やっ！ひっさしぶりー！」
バタン
開けた瞬間視界に飛び込んできたのは全身黒ずくめの目隠しをした白髪の男
私に与えられる下級の任務に彼の同行が必要なわけがない
…どうやら乗る車を間違えたようだ
迷うことなく閉めたドアにくるりと背を向け別の車を待つことにした私は先程まで立っていた位置まで戻るべく足を踏み出した
しかし先程閉めたはずのドアが再び力強く開き、そこから伸びた手にガシッと背中の服を掴まれる
抵抗する間もなく気が付けば車内におり、誘拐の文字が頭を過る程のスムーズな乗車であった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1583人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ksbgtenmushi(プロフ) - すごく好きな作品でいつも続き楽しみにしてます！！是非続編のパスワード教えていただきたいです(o^^o) (2021年5月1日 1時) (
レス) id: e9d7731bcb (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - いつも楽しく拝見させて頂いてます！！続編のパスワードを教えて頂きたいです。 (2021年4月27日 22時) (レス) id: 1f3621aec0 (このIDを非表示/違反報告)
雪椿(プロフ) - いつも楽しみにしています。続編のパスワードが解けるその日を心待ちにしてます(*^^*)応援してます！ (2021年4月26日 22時) (レス) id: e95a52c7d4 (このIDを非表示/違反報告)
noenatsu(プロフ) - 続きがきになります！パスワードを教えて頂きたいです！ (2021年4月26日 22時) (レス) id: a7d2cd1144 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続編も楽しみにしていました！ パスワードを教えていただけないでしょうか？ (2021年4月26日 20時) (レス) id: 947d5e398f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かのん | 作成日時：2021年2月26日 0時
