君へのSong (ページ6)

今日:26 hit、昨日:21 hit、合計:214,674 hit

6 ページ6

＊

お昼休憩中も、片耳にイヤホンをさして正門さんの声を聞きながら、まかないのカルボナーラを巻きつけていると、

「まじ、あのPTA集団うるさすぎ」

ぐったりした大吾さんがカレーを片手に入ってきた。

「おばさま集団ですか？」

「公共の場での声のボリューム考えろゆうねん」

「あ、そうそう！」

カバンに入れっぱなしのCDを1枚取り出す。

「はい、どーぞ！お代はいらないですよ！」

大吾さんはわたしが何を応援しているのかにも全然興味を示さないけれど、布教活動もファンの役目のひとつだ。

大吾さんは机の上に置いたCDを見ると、カレーをすくったスプーンを口の前で止めてかたまった。

「………え」

「どうしたんですか？」

「いや…別に…」

「もしかして知ってました？正門さんって言うんですけど！」

「…いや、知らん…」

大吾さんは首を振ってカレーに視線を落とした。

変なの。

「じゃぁAの好きなやつって、その正門って人？」

「ええ～やめてくださいよ！照れる！」

「いつから応援してんのやっけ？」

珍しく興味を示しているらしい。

「正門さんが活動始めた頃からですから、半年前？今年の春ですね」

「なるほどね」

「何がなるほどなんですか？」

「いや別に、てっきり地下ドルかなんかやと思ってたわ」

大吾さんは全くCDを見ずにもくもくと食べ続けている。

「アイドルとは違いますよ～」

「どういう意味やねん」

「そりゃ大吾さんの嵐さんとはスケール違いですけど、正門さんだっていつかは武道館までいけるってわたしは信じてます！」

大吾さんは嵐の二宮くんが好きらしく、CDは全形態購入、雑誌もチェック、もちろんFC会員らしい。

スマホのカバーも黄色だし。

「まぁ破産せん程度に」

大吾さんは空になったお皿を持って席を立つと、そそくさと出て行った。

本当に仕事大好き人間やなぁなんて思いつつ、机に残されたCDをしまう。

何をそんなに動揺してたんやろ…

リピートボタンを押しながら、わたしは半熟卵を崩した。