君へのSong (ページ42)

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「Aさん、何ニヤニヤしてるんですか？」

「ふふ～！今日、正門さんのCM発表されてん！」

休憩室でイレブン飲料の特設サイトの画面を詩織ちゃんに見せる。

「へぇ～！Aさんがずっと応援してる兼好きな人が歌ってるんでしたっけ…？」

「そやねん～。って詩織ちゃん何その言い方！でもさ、歌だけかなって思ってたら、CMにもちょっと映ってるねん」

再生ボタンを押すと、正門さんの新曲をバックに今をときめく俳優さんと女優さんがベンチに座って喧嘩をしてて、

最後にホットティーを差し出して仲直りっていうベタなストーリーのCMが流れた。

右下の方に曲名と正門さんの名前がクレジットされてて、夢みたい。

「ここ！」

2人を見守るように一瞬だけ向かいのベンチでギターを弾いてる正門さんが映る。

「え…この人…」

詩織ちゃんが驚いた顔で画面を覗き込む。

「かっこいいやろ？どうかした？」

「あ、いや、先週来てたんですよ。ここに」

「そうなん？」

「大吾さんとお話されてて…」

「ああ～！2人高校からの親友らしいねん」

「そうやったんですね」

詩織ちゃんが口ごもる。

「なんか…喧嘩じゃないけど、言い合いみたいな感じになってて」

喧嘩…？

温厚な正門さんとなんだかんだ優しい大吾さんが喧嘩してるところって想像しづらい…

「なんかあったんかな…？」

そういや先週1週間、わたしのバイトの穴埋めをしてくれてた大吾さんとは、今週は一回もシフトが被ってなくて直接お礼も言えてない。

「まぁ詳しいことはわかんないですけど」

詩織ちゃんが目をそらす。

「なんとなくAさんは聞かない方がいいと思います」

「なんで？」

「やっぱりわかってないんですねAさん。大吾さんも大変だなぁ。お先です」

詩織ちゃんは長い黒髪をさっとまとめ上げると、ホールへ出て行ってしまった。