君へのSong (ページ26)

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「Aちゃん、ほーんまに申し訳なかった」

ストリートライブの後。
いつものコンビニの前。

あの対バンの日以来、やっと正門さんとゆっくり話せる。

「やめてください。わたしもほんと無知で」

深々と頭を下げる正門さんを慌てて起こす。

「あれから体大丈夫でした？」

「なんとか…大吾にも迷惑かけたわ。Aちゃんにもあんな姿見せてしもてほんまかっこ悪いし…」

金髪をかきながらバツの悪そうな顔をする正門さん。

「守ってくれて、正門さん…かっこよかった…です！」

なんとか照れないで言い切ると、

「Aちゃん…ずるいわ」

正門さんの瞳が揺れて、顔がふわっと近づいてくる。

「そういやさ、まだ発表はしてへんねんけどワンマンライブ決まってん」

正門さんはわたしの耳元で小声で囁いた。

「えええっ！おめでとうございます！」

「ありがとう。次の新曲も発表できそうやし見にきてな？」

「はい！絶対！」

すごい。正門さん。チャンスを次々にものにしてる。

「もいっこサプライズもあんねんけど、それはライブまで楽しみにしてて」

いたずらっぽく笑う正門さんが、かわいくて愛しい。

「ライブいつですか？」

わたしはスケジュール帳を開く。

絶対空けとかなきゃ。

「えっとなー、この日やねんけど」

正門さんが指差した日は、わたしの誕生日の翌日。

嬉しすぎる誕生日プレゼントやなぁなんて考えていると、

「前の日、Aちゃんの誕生日？」

スケジュール帳に書いた『A誕生日』の文字を正門さんの指がなぞる。

その通りやけど、自分で書いてたん見られたの…なんか恥ずかしい。

「…はい」

「そなんや。誰かとお祝いすんの？…彼氏とか…？」

「い、いません！彼氏なんか」

思わず声を張ってしまったけれど、

「普通にバイトだけです…」

なんかさみしい女みたい…。

「バイト何時から？」

「オープンから昼過ぎです…けど…」

「じゃぁさ…お祝いさせてくれへん？」

「え…？」

「夕方にはリハも終わると思うから、俺の家でお祝いしよ？」

正門さんと…ふたりで…家…

突然の誘いに頭が回らない…

「あ、ごめん俺、変なこと言ってる…？」

「ぜ、全然っ！嬉しいです」

心臓の音聞こえちゃいそう。

「Aちゃんにはいつも何かしてもらってばっかりやから、たまには返させて」

頬にあたる夜風も忘れるくらい、わたしの心はふわっとあたたかくなっていた。